ニット機大手の島精機製作所は26日、株価が午前10時前に5490円をつけ、年初来の最高値を更新した。終値も前日比1.5%増の5430円だった。同社は縫製なしで、糸から一気にウエアの完成品を作れる「ホールガーメント(WHOLEGARMENT)」機を展開しており、5月に2017年3月期の通期決算と社長交代を発表以降、株価の上昇を続けていた。IR担当の南木隆・島精機取締役は主に海外投資家からの買い注文が増えていると分析、「6月上旬に欧州で機関投資家向けにラウンドした。『ホールガーメント』を筆頭に、自動化の技術などに関心が高く、軒並み好反応だった」とコメント。同社の外国人持株比率は12〜13%に過ぎないが、海外投資家の買いに反応する形で、引っ張られているようだ。
欧州では昨年後半にアディダス(ADIDAS)がドイツ国内でロボットを使ったシューズの自動生産工場“スピードファクトリー”の稼働を開始以来、ファッション分野での自動生産への関心が急速に高まっている。“スピードファクトリー”は、島精機のライバルである独ストール(STOLL)社のニット機を採用しているが、島精機もシューズ専用の「ホールガーメント」機を開発するなど、追撃する態勢を強めていた。独ストール社に比べ、「ホールガーメント」の方が3Dデザインによる開発と生産面で先行しており、欧州でも今後への期待が高まっていると見られる。
また、6月28日付で就任した島三博・社長は、ソフトウエアや生産管理システムのクラウド化を1〜2年内に実現すると明言しており、実現すれば糸から一気にウエアを生産でき、かつ機械の稼働率も可視化できる、前人未到のアパレル生産のIoT化にも期待も高まっているようだ。「ホールガーメント」は1995年に発表以来、すでに20年以上経過しているが、世界でこうした一貫生産を実現できた繊維機械は今も登場していない。
「ホールガーメント」機の販売は17年3月期、期初目標の1500台には届かなかったものの、過去最高の707台を販売(前期は556台)、18年3月期には1200台の販売を計画している。