デンマーク発のシューズブランド「エコー(ECCO)」の自社レザー工場、エコー・レザー(ECCO LEATHER)は6月28〜30日まで世界中から120人のデザイナーやクリエイターを招きワークショップ「ホットショップ( HOTSHOP)」を開いている。「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」「プーマ(PUMA)」「ニューバランス(NEW BALANCE)」から「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」、アップル社やIT関係の企業まで、業種を超えたクリエイターたちがオランダ・ドンヘンに集結し、3日間で新しいレザーを開発するワークショップに取り組んでいる。日本からは、デザイナーの三原康裕とシューズメーカーでインテリアデザイナーの五宝賢太郎が参加中だ。過去には、熱で色が変化する“クロマタファー(kromatafor)”、白いレザーを特殊な液体に浸し酸素に触れると藍色に染まる“トゥルーインディゴ(true indigo)、など革新的なレザーが生まれている。また、アップル社のアップルウォッチ、iPhoneやiPadのケースのレザーもエコー・レザーが供給しているが、このワークショップにアップル社のクリエイターが参加したことがきっかけで協業が始まった。ホットショップがユニークな点は、異業種のクリエイターが共にワークショップを行い、さらに全ての情報がオープンにされているところだ。
エコー・レザーはイタリアやフランスのラグジュアリー・ブランドやアップル社が採用する上質なプレミアムレザーを供給する世界5大レザーメーカーだ。特にレザー開発における革新性は、多くのクリエイターの中で知られている。ホットショップは、10年前に14人から始まり、10回目を迎えた今年の参加者は120人にまで増えている。
三原康裕は先日行われた2018年春夏ロンドン・メンズ・コレクションで、エコー・レザーが開発したトランスペアレントなレザーを用いたシューズやバッグ、帽子を発表するなど、エコー・レザーのプロダクトをコレクションに取り入れている。三原デザイナーは「透けるレザーは実は15、16年前に豚革で取り組んだことがあった。でも豚革では、硬くなるなど製品化は難しかった。とはいえ、当時、カーフレザーではできなかった技術だった。今回エコー・レザーがカーフでその技術を用いていたことに驚き、ついに牛でできる時代が来たと感じたし、今回、初めて工場を見て、もっといろんなことができる可能性を感じた。朽ちることをクリエイションしたいと考えているが、味が出ること以上の何かを作りたいと強く感じた」と話した。五宝賢太郎は、「工場の設備がまず素晴らしい。下処理を機械で行い、色付けなどのディテールワークを人が行うという工程は世界のスタンダードと逆。さらに、携わっているスタッフのレベルも高い。また、BtoBのメード・トゥ・オーダーのレザーも、ウェットブルー(初期処理段階)の検品の段階からそれぞれの特性に合わせている。小手先だけじゃないオーダーの受け方にも驚いた」とコメントした。
エコー・レザーがあるドンヘンは、アムステルダムから車で1時間あまりの小さな街で、水質が良く伝統的に革なめしが盛んだった場所だ。その工場の一つを「エコー」が「究極の靴作りは素材である革から手掛けるべきだ」という考えのもと、2001年に買い取り、自社工場にした。「エコー」は革なめしから靴の製造までの全てを自社工場で行っている数少ない企業だが、そのこだわりが、北欧らしいミニマルなデザインと他にはない快適な履き心地を実現している。