コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)、いわゆるリシュモングループ(以下、リシュモン)は、低迷していたファッションブランド「上海灘(シャンハイタン、SHANGHAI TANG)」を売却する。7月3日(現地時間)、イタリアのフィナルバ SPA ホールディングス(FINALBA SPA HOLDINGS)のアレッサンドロ・バスタリ(Alessandro Bastagli)社長に売却すると声明を発表した。バスタリ社長は、同じくイタリアのテキスタイル企業リネアピウ イタリア SPA(LINEAPIU ITALIA SPA)、アパレルメーカーA. モーダ SPA(A. MODA SPA )の社長兼最高経営責任者でもある。売却額は明らかにしていない。これによる決算への影響は、ほとんどないとしている。「上海灘」は近年、営業赤字だった様子。
業界関係者は、「上海灘」の売却は、主力である時計・宝飾に注力するヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長のコストカット戦略に合致するとして、(不採算事業の整理などにより)、規模よりも効率を重視する姿勢を強化するだろうと分析。「上海灘」は、「リシュモンの中で一番マスなブランドで、企業との親和性が低かった」と話す。
ブランドは1994年、デイヴィド・タン(David Tang)が創業。中国最初のコンテンポラリー・ラグジュアリー・ブランドとして、メンズとウィメンズ、アクセサリー、ホームなどを手掛け、世界に32のショップを構えている。リシュモンは98年、上海灘の過半数株式を取得し、のちに全株式を取得した。
ルパート会長は、不安定な為替相場やテロの脅威、小さなブランドが溢れている市場環境などを鑑み、事業の再構築に取り組んでいる。「現代の消費動向を踏まえ商品や流通環境を見直し、長く成長できる企業に進化したい」と話す。技術革新、ECを中心とするデジタルマーケティングを核に、リストラにも取り組んでいる。市場関係者は、「リシュモンに聖域なし」と考えているが、「ランセル(LANCEL)」や「ダンヒル(DUNHILL)」など、過去苦戦していたブランドは再建の道を歩んでおり、すぐに売却する可能性は低いと分析。一方で「コアビジネスの時計・宝飾とファッションは、ビジネスのやり方が大きく異なり、リシュモンは決して後者に長けていない」と話す関係者もいる。