「
ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「
シュプリーム(SUPREME)」のコラボ商品を販売する南青山のポップアップストアに赤シリーズを中心とした新商品&追加商品が投入された7月7日朝、行列に並び、プラチナチケットをゲットして、謎に包まれていたストアに潜入&ショッピングをしてきました!
朝5時起きをして6時過ぎに行列のスタート地点に行くと、徹夜組の男性2人組を先頭に国連大学前・こどもの城方面の246側の行列はすでに満員で、表参道に沿った列もちょうど「ルイ・ヴィトン」「ミッソーニ」あたりまで延びていました。中国人の並び屋集団の真ん中にポツンと一人……。かなり居心地の悪い思いをしましたが、予習のために情報収集をしたり、フェイスブックに投稿したり、目の前を通り過ぎていく行列に並びそうな人数をカウントしたりしているうちに4時間が経過。タブレットを持ったスタッフが近づいてきて、抽選券と引き換えにスタートボタンを押すと、当たりハズレが分かるという仕組みでした。
中国語と英語も書かれたボタンを押すと、CONGRATULATION!の文字の下に、大きな赤い丸と集合時間・ショッピングタイムが描かれた画面が現われました。「ファッションスナップ」によると8700人、私の目算で1万人、「ルイ・ヴィトン」の公式発表数では1万2500人という、日本のファッション史上最大級の行列のうち、当選者数は推定360人。倍率は約30倍、当選確率は4%弱という狭き門です。奇跡的ですよね。
この時点では、「これで行列レポートだけでなく、店内レポートもできる!」という思いが強かったんです。スタッフの人に「危ないので早く立ち去ってください」と言われて、ちょっとドキドキしてきました。案の定、何人かに声を掛けられました。ちょっと離れた場所で、20代と思われるキレイめな格好の男の子から、「即金で30万円払うから入場券を譲ってほしい」と言われ、ちょっとぐらっときましたが、さすがに断りました。他の当選者の中には、60万円で買うと言われた人もいたようです。実際、札束を持った人もいて、過熱ぶりを改めて体感しました。
デザイナーズコラボや限定品の発売、日本初上陸ブランドのオープニング、さらには百貨店・ファッションビルの初売りやセールなど、これまでも数々の行列を取材してきました。人々の心と財布を刺激するモノやコト、仕掛けとはどのようなものなのか。どういった人々が集まり、どんな世界が繰り広げられているのか。行列とその先を見ることで、マーケットの潮流や次のビジネスの芽を感じ取れると考えているからです。
そんな行列ウオッチャーの側面を持つ私としては、今回のコラボには並ばずにはいられませんでした。「シュプリーム」は常に“並び”ができる人気ブランドであり、「シュプリーム」好きだというキム・ジョーンズ「ルイ・ヴィトン」メンズ・コレクション・アーティスティック・ディレクターによってデザインされたコラボアイテムはパリ・メンズ・コレクションで発表され、強烈なインパクトを与え、その時点から話題性と購買意欲を掻き立てていました。ある程度の行列はできるだろうと予想していましたが、6月30日のオープン初日には公式発表で7500人もが並び、私の知る限りのファッション系行列の最多記録を更新。連日の行列や、6万8040円のボックスロゴTシャツが50万円、その他も軒並み2~5倍の超高値で転売など、異常ともいえる熱狂ぶりを呈していました。さらに、先着順ではなく抽選で入場者を決める方式や、なかなか見えてこない店内でのショッピング風景やオペレーションなどにも興味をひかれ、これは何が起こっているのか見届けなければと思い、行列に並ぶことにしたわけです。
入場時間の15分前に表参道交差点に再集合し、各自で「アクネ ストゥディオス(ACNE STUDIOS)」や「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」の並びにあるポップアップストアに移動。番号順に並ぶと、すぐに地下に案内されます。実はこの地下がすごかったんです。階段を下りると一人ひとりパーソナルデータの登録に誘導されるのですが、皆、早く買い物をしたいのでそわそわしています(笑)。ちなみに、当選者は店内や商品の写真が撮り放題ということで、購入者に対する接客サービスはラグジュアリーブランドそのものの対応でした。
いよいよショッピングタイムです。事前情報の通り、購入できるのは、バッグ1点、革小物1点、アパレル3点、アクセサリー・雑貨1点、シューズ2点の計8点です。バッグはコレクションで斜め掛けされていたボムバッグやキーポル(ボストン)、ポーチなど。革小物は財布、iPhoneケースなど、アクセサリーはサングラス、キーホルダー、ブランケット、クッションなど。すぐに争奪戦になるのかと思いきや、入店時に1人に1人、全国から集まった「ルイ・ヴィトン」の販売スタッフがアテンドしてくれるため、みなさん、比較的穏やかに、悩みながら、商品を選んでいました。赤いシリーズの新規投入と、商品の追加などにより、11時の回はより取り見取りだったようですが、そこで狙っていたリバーシブルのトレンチやカードケースの黒などは完売したとのこと。14時の回にはキーポル(ボストン)の赤、パーカー各サイズ、デニムジャケット、ベースボールシャツ、デニムのオーバーオール、バックパックなどは完売となっていたので、何を買おうか、戦略の練り直しなどをされていたものと思われます。
完売してしまっていたリバーシブルのトレンチコートとデニムのオーバーオールを諦め、当初予定のボックスロゴTに加え、スエット、デニム、白 × 赤と黒 × 茶のシューズ2足を自分用に購入。友人に頼まれていたボムバッグ、アイトランク(iPhoneケース)、ブランケットも無事ゲットして、買い物を終了しました。ちなみに、平均購入金額は100万円を超えていたのではとの声も聞かれました。
キーポルの黒、欲しかったなぁ、とか、後輩に頼まれたアイテムが買えなかったなぁなどと後ろ髪をひかれつつ、会計の間に、地下のスペースをあらためて拝見しに行きました。中央には特性カーペットが敷かれた上に、500万円台のトランク&スケートボードのセットや、700万円台のトランクなど、スペシャルアイテムを置いた小部屋になっています。
その周囲や背面は、ほぼ全面がデジタルサイネージと鏡で構成されていて、ドクンドクンという鼓動のような音とともに真っ赤なモノグラムが動き始め、次第に流れるように形を変えながらまた元の静寂に戻る、ということを繰り返していました。30分とショッピングタイムが限られている中では、買い気が勝るのは当然で、このデジタルインスタレーションをきちんと見た人はかなり少なかったはずです。しかも、裏側まで入った人はほとんどいなかったかもしれません。
それでも、この空間の一角でエントリーをすることで、当選した高揚感だけでなく、自然とアドレナリンが出てテンションが高まり購買意欲に拍車をかけられたはずです。ショッピングを済ませた数時間後に、「完売のため」、7月7日(当日!)でポップアップストアを前倒し閉店すると聞き、このデジタルインスタレーションが、もう人の目に触れることなく解体されてしまうのだということが一番残念でした。確かに商品もかなり少なくなっており、行列したのに買えるものがないと憤るお客さまもいらっしゃるかもしれません。もちろん、警備上の問題ということもあったかもしれません。「ルイ・ヴィトン」側も警備には相当気を配っていましたし、かなり警備費もかかっていたはずです。行列の最中には警察官が写真を撮っている姿も見かけましたから、指導などが入ったかもしれません。
なにはともあれ、デジタルインスタレーションは14日からとウワサされる表参道店や松屋銀座店、六本木店などの一般販売の際に、どこかの店舗に再登場してくれたらいいのになぁと思わずにいられません。行列や外国人を含めた並び屋、転売など問題は多々あるとは思いますが、これだけの人々やお金を動かすパワーのあるブランドやコラボレーションはそうそうあるものではありません。今回は「シュプリーム」からのオファーで実現したということですが、「藤原ヒロシ率いるフラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」とのコラボに続き、ストリートラグジュアリーの波をうまくとらえた「ルイ・ヴィトン」のマーケティング力や懐の深さには改めて驚かされました。もうすぐ、「H&M」のデザイナーズコラボも発表されるはずですが、「ルイ・ヴィトン」 × 「シュプリーム」を超える話題のコラボになるのか、注目していきたいと思っています。