本連載は、代官山 蔦屋書店コンシェルジュがオススメの商品を紹介するものだ。第3回目は、文具担当の佐久間和子コンシェルジュに聞いた。蔦屋というと書籍・雑誌、CDや映画のイメージがあるが、代官山 蔦屋書店には文具コーナーも常設している。万年筆やボールペンが壁一面に並ぶ文具コーナーには、実は意外な商品も。その商品を求めてやってくる熱心なファンもいるそうだ。代官山 蔦屋書店の守備範囲の広さを物語る一品を紹介する。
「文具コーナーでは、筆記具をメーンにしていますが、ちょっと変わった雑貨類もあります。これは、金属製のコマで10分くらい回り続けます。18分も回した人もいるようで、上手に回すと静止しているかのように回転します。岐阜県のシオンという、航空機や新幹線の部品を作っている工場が手掛けるコマです」。コマの素材は、レアメタルのタングステンや超々ジュラルミンなど工業製品に使用される金属。一個人の生活ではなかなか触れることのない金属をコンパクトな形で身近に置くことができる。「素材や形によって回転時間や動きが変わります。タイヤのホイールのような形のコマは、ふわふわと揺れるように回ります。少しずつ種類も増えており、今夏発売予定のモデルは、回る途中で上下の向きが入れ替わります」。
シオンが手掛けるブランド「ネイバー(NEIGHBOR)」は、コマの他にも真ちゅうの小物入れや、二枚貝のような形で揺れるアルミの灰皿、マッチケースなどもそろえる。「面白いモノだと、分銅があります。水10gと同じ体積でできていて、それに対して金属の重さがどれほどか実感できます。7種類の金属が1セットになっていて、うち6種類はシオンが作っています。このことは実はすごいことで、異なる金属を同じ形に加工するためには、金属の特性ごとに機械の設定を変える必要があります」。
シオンは、日本中の製造業者が集まるコマ大会「全日本製造業コマ大戦」で、2012年に優勝した経験がある。その際、シオンから代官山 蔦屋書店にコマを商品として置きたいとの依頼があったという。「唐突に、売り場にコマがあっても売れないのではないかと思いました。ただすごいコマだったので、文房具を作ってもらえれば一緒に置くことができると提案しました。すると、たった2週間ほどでチタンの削り出しのボールペンを作って持ってきてくれました。チタンは筒状に削るのがとても難しいはずなのに、短時間かつ商品として現実的な価格だったので私も感動しました」。コマ3種類、ボールペン2種類からスタートし、徐々に商品数を増やし、現在では新作が出ると必ず購入するファンもいるという。
次回の8月10日は、数多のSF映画の元をたどるとここに行き着く、そんな1本を紹介。「スター・ウォーズ」でも「エイリアン」でもないSF映画の元祖とは……?
今回のコンシェルジュ:佐久間和子
フリーのイラストレーターや、総合文具店の販売員を経て、代官山 蔦屋書店にて文具コンシェルジュの職に就く。万年筆を中心とした高級筆記具と、金属加工技術を応用した卓上プロダクトに精通し、売場のMDから接客販売までを手掛けている。ツイッターにて公式アカウント「代官山 蔦屋書店 文具(@DT_stationery)」の中の人を担当している。