新潮社出版部文芸の公式ツイッター(@Shincho_Bungei)が7月14日に投稿した内容が大きな話題を呼んでいます。
「担当編集から読者の皆様へ、お願いです。この小説、すごすぎて、いまだコピーをつけられずにいます。恐縮ですが皆様のお力をお借りしたく、発売前に異例の全文公開に踏み切ることにしました。ぜひご応募いただければ幸いです」
とのこと。
新潮社の詳細ページを見ると、「ある日突然送られてきた、まったく名前の知られていない著者による、刊行前の小説」を2週間限定で7月27日23時59分まで、全文掲載しているのだそう。ものすごく面白い小説だったので、担当編集はすぐに書籍化(8月22日発売予定)を決めたものの、あまりにすごい内容にキャッチコピーが書けなかったといいます。そこで、無名作家のキャンペーンも含めて異例の全文公開&キャッチコピー公募を実施したのです。もちろん、すぐに読んでしまいました。
新潮社の書籍の見せ方は、とても面白いものが多いように感じます。先日、恋愛小説「ボクたちはみんな大人になれなかった(新潮社)」を手掛けた、燃え殻さんという作家が寄稿した記事を東洋経済オンラインで読みました。記事タイトルは「男はみんな『元カノの成分』でできている〜43歳男性が忘れられない人を思い出すとき〜」。普通に気になります。ツイッターで多くのフォロワーを持つ燃え殻さんが自身の経験をもとにした書籍を出した理由を述べているのですが、これがとても面白い。キャンペーンの一環だと思いますが、これぞ編集力、といった感じでスラスラ読んでしまった上に書籍も欲しくなりました。新潮社のアナログとデジタルをうまく絡めたプロモーションには学ぶものがあります。
少し前ですが、岩手のさわや書店が始めた小説「殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件(新潮社)」のプロモーションも話題を呼びました。少しでも中身に興味を持ってもらおうと、「文庫X」という名の特製カバーを書店で作り、あえて中身もタイトルもわからない状態で販売をしたのです。こちらは版元が仕掛けたものではなく、地方書店がきっかけで、それが全国へと広まったといいます。デジタル化が進む出版業界ですが、こういった店頭の独自プロモーションやSNSを使った新しいキャンペーンなど、書籍を取り巻くコンテンツにも注目したいものです。