販売代理店のワールドスタイリング(WORLD STYLING)は今秋以降、デビュー5年以内の経験豊富な若手3ブランドの取り扱いをスタートする。同社はこれまでも、「コディ・サンダーソン(CODY SANDERSON)」や「マインドシーカー(MINDSEEKER)」など、次世代の“ラグジュアリー・ストリート”を狙う若手ブランドをフックアップしてきた。
「バナ(BANA)」は、LAで人気のスケートボードブランド「ダイヤモンド サプライ(DIAMOND SUPPLY CO.)」で、ウィメンズ・コレクションのヘッド・デザイナーを務めていたバナ・ボンゴーラン(Bana Bongolan)が2017年春夏からスタートしたユニセックスブランドだ。シンボリックなライダースジャケット(約28万円~)は、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」でレザーアイテムを手掛けていた職人が製作している。シーズンルックは、米「ハイプビースト(HYPEBEAST)」に所属するフォトグラファーが撮り下ろした。バナ=デザイナーがファッション業界に足を踏み入れたきっかけは、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)の音楽レーベル「TDE」のスタイリスト、ダイアン・グラシア(Diane Gracia)と大学のルームメイトで、ファッションブランドのインターンを紹介してもらったからだという。音楽とも密接なブランドだからこそ、ライブやパフォーマンスでミュージシャンが着用すれば一大スターダムにのし上がる可能性もある。ブランドカラーのオレンジについてバナ=デザイナーは「オレンジを使うのにはいろんな理由があるけど、『エルメス(HERMES)』のようなハイエンドブランドがオレンジをとてもエレガントに使っているから。そのエレガントさは、私がずっと追求し続けているファッションのイメージ。ラグジュアリー市場で誰もが知っているブランドを目指す」と今後の目標を話す。
一方、「カビアーレ(CAVIALE)」は12年に立ち上げ、国内ではこれまでもリステア(RESTIR)などのセレクトショップで販売していた。一人でデザインから生産を手掛けるのは、大学で建築を専攻していた27歳のアーサン・マームッド(Ahsan Mahmood)だ。アートペイントやグラフィックデザインを得意とし、ブランド立ち上げ前は「ジバンシィ(GIVENCHY)」のグラフィックデザインも担当していた。神話、宗教、文学、映画、薬学、音楽、政治、バロックアートなどからインスピレーションを得たグラフィックが特徴で、あくまでデザインを評価してもらいたいと、デザイナーとしては表立ってメディアには露出せず、控えめ。アーサン=デザイナーは「ロゴが真ん中にぽつんとあるような簡素な洋服が好きではない。ロゴしかついていない洋服は自分にとって、ウィスキーをプラスチックのカップで飲むのと同じような感覚で完璧じゃない」とあくまでグラフィックで勝負する。Tシャツやスエットが中心だったコレクションの幅をこの機に広げ、トータルで提案。Tシャツやパーカが5万~6万円台と高額だが、イタリア産の生地やランポー(LAMPO)社製のファスナー、パリコレブランドの「バルマン(BALMAIN)」と同じ縫製工場で生産するなど、素材や生産背景にもこだわる。今後は、スニーカーやデニム、メンズコロンのデザインなど、さらにコレクションに幅をもたせ、継続して上質な商品作りに注力する。
3つ目は、日本人女性デザイナーのキング(King)がデザインする「キング(KING)」だ。14年にスニーカーのカスタマイズブランドとしてスタートした。ビーズやメタルパーツ、ビンテージファブリックなどを使ったデコレーションが特徴で、今や「ナイキ(NIKE)」も公認の上、“エア フォース1(AIR FORCE 1)”や“ダンク(DUNK)”などをカスタマイズ。17-18年秋冬シーズンからカスタムライン以外の量産用インラインを立ち上げ、Tシャツやジャケット、スエットパンツなどを販売する。カスタムラインは、Tシャツが5万~10万円、ミリタリージャケットが25万円、デニムジャケットが10万~15万円、スニーカーが8万円~だが、量産分は、Tシャツが9000円、ミリタリージャケットが8万円、デニムジャケットが5万円、スエットパンツが2万~2万4000円など。17-18年秋冬シーズンは“ラ・ムー(ムー大陸の太陽神 ラー)”をテーマに幾何学模様のデコレーションや民族調のファブリック、ハイビスカスのペイントなどを施したウエアがラインアップする。既に中国では人気が高く、昨年、中国・天津に路面店をオープンした。日本での躍進を目指す。