PROFILE:2009年、ストライプインターナショナル入社 。「アース ミュージック&エコロジー」の店舗に配属され、販売スタッフ、店舗責任者、スーパーバイザーを経験。 12年に人事部へ異動 し、社内研修・店舗人事評価制度を担当。16年から現職。 社内制度について他部門との調整や、LGBT等ダイバーシティ推進の活動に携わっている PHOTO BY YUKIE MIYAZAKI
「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC & ECOLOGY)」や「コエ(KOE)」といったアパレルブランドの他、コスメやフード、ファッションレンタルサービス「メチャカリ(MECHAKARI)」など、業種の枠を超えてビジネスに挑戦しているのがストライプインターナショナル(STRIPE INTERNATIONAL)だ。海外への進出にも積極的で、東証一部への上場も予定する。インターナショナルな1兆円企業を目指す、同社の新卒採用の基準とは?上野真未・人事部採用チームマネジャーに聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):求める人材像は?
上野真未・人事部採用チームマネジャー(以下、上野):主に2つあります。一つは、弊社の理念である“セカンドファミリー”に共感していただけるかどうか。弊社は人と人が信頼し合うことで会社は成長していくと考えています。スタッフ同士はもちろん、お客さまとの関係性をしっかり作っていける人を採用したいです。もう一つは向上心があること。弊社はいろいろなことにチャレンジしています。今の環境に甘んずることなく、自分に何が足りていないのか、自問自答をしながら、自分を成長させていける人を求めています。
WWD:今年4月は何人採用しましたか?
上野:390人くらいです。総合職と地域限定職を採用しますが、現場第一主義なので、全員現場スタートです。総合職は全体の3割強で、全国での異動がありえます。
WWD:具体的にはどんな人を採りましたか?
上野:明るく、人とコミュニケーションを取っていけるスタッフが多いです。チームで動くのが主なので、協調性は大事ですね。
WWD:“セカンドファミリー”への共感が重要だということでしたが、面接で測るのですか?
上野:グループ面接が多いので、そこでのやりとりを見たり、雰囲気なども見ています。学生時代の経験やどう人間関係を構築してきたかを聞いたり、あそこのお店のスタッフたちと働けそうかなどを具体的に想像してみたりもします。とはいえ、社員を同質化させたいわけではないです。一人一人が個性を持って、自分の想いを発信できるような人がいいと考えています。
WWD:新入社員に対する社内の反響はどうですか?
上野:仕事をしているとうまくいかないことって必ずあると思うのですが、そのうまくいかない環境の中で、自ら成長しようとする人、任されたことに120%で返すような前向きな人は、とても評価されています。上司に可愛がられると、新しいチャンスもどんどん与えてもらえるので、いいスパイラルが生まれます。変なプライドは持たずに、分からないことは早く聞き、自分の弱さも見せながらコミュニケーションできるというのは大事ですね。
WWD:売り場からの採用もありますか?
上野:15年からアルバイト採用を始めましたが、17年入社に関してはそこからの流入率が増えています。現場を知り、その苦しみも楽しみも知る人たちなので、マッチング率は非常に高いですし、即戦力にもなりえます。17年入社では1割くらいを占めました。
WWD:男女比は?
上野:男性が1割くらいです。
WWD:入社後に配属されるブランドについては、希望は加味されますか?
上野:希望は聞きますが、それを元に本人の雰囲気などを見て、配属を決めます。
WWD:ブランド間の異動は多いですか?
上野:ブランド異動には2パターンあります。自分で手を挙げるのと、会社からの辞令です。前者は新店が年間100店くらいあるので、その時に募集をかけ、手を挙げてもらいます。
WWD:本社への異動、例えば広報がやりたいとか、MDになりたいといったキャリアアップは可能ですか?
上野:年4回公募制度があります。そこに立候補してもらい、試験などに受かったら、異動になります。店舗から本部に移る道はなるべく確保したいと考えていますので、幅広い職種がオープンに募集されています。
本社本部の営業部門のフロア。ところどころに風船が浮かび、中央に「未来妄想室」がある
本社本部の営業部門のフロアにあるカフェスペース。お弁当を食べたり、商談に使うこともあるという
エントランスにあるライアン・ガンダーによるオブジェ。石川社長のアートコレクションの一つ
WWD:来年4月の新卒採用はどのくらいの人数を予定していますか?
上野:450人を目標にしています。今のところ順調に採用できています(6月現在)。
WWD:順調とは素晴らしいですね。入社5年目の社員は例えばどんなことをしていますか?
上野:管理職を目指すタイプと地道に接客を極めていくタイプと2つに分かれます。5年目は早い人ですと、店長よりも上のスーパーバイザーに就いています。店長や、接客を極めたいタイプでも副店長に就いたりしている人もいます。もちろんそれ以下の役職で活躍しているスタッフも多いです。
WWD:新卒の初任給は大卒総合職で23万1000円ですが、5年目だといくらくらいの給与ですか?例えば、スーパーバイザーを務めている人の場合は?
上野:具体的な金額はお伝えするのが難しいですが、役職が上がると、役職手当が上乗せされるようになります。
WWD:販売員にインセンティブはありますか?
上野:ありません。お店の売り上げと評価シートで評価しています。
WWD:ちなみに店頭で着る服に対する補助はありますか?
上野:具体的な割引率は控えますが、あります。自社ブランドを購入する際も、所属ブランドより率は低くなりますが、割引があります。
WWD:時短勤務制度が整っていますが、販売員として働いて、結婚・出産して、戻ってきて短時間で働くという人も多いですか?
上野:「キッズ時短制度」と、結婚、妊娠、介護などの理由による「時短勤務制度」の2つがあり、社員の15%くらいが利用しています。
WWD:特筆すべき研修制度や福利厚生はありますか?
上野:お店の中の年齢の近い先輩社員がマンツーマンで新入社員を教育・指導する「シスター・ブラザー制度」というのがあります。よくあるOJTではあるのですが、毎日のフィードバックを徹底しているので、「今日はこれを頑張ろう」「これをできるようにならないと」といった目標・達成が明確になり、また、関係性も密になるので好評です。また、2年目以降の社員は教える立場に回るので、それも本人の成長につながります。
WWD:新卒3年目の定着率はどうですか?
上野:年々改善傾向にあります。関係の質を高めないと結果が出ない、ということで15年から“セカンドファミリー”を打ち出してきましたが、その効果が出てきていると思います。例えば、弊社では「アミリー」という社内SNSでアルバイトも含めて従業員全員がオープンにやりとりできるようになっていて、コミュニケーションが気軽に取りあっています。社長とアルバイトがやり取りをしたりしています。
WWD:頻繁に活用されているんですか?
上野:例えば、販売応援に来たショップのスタッフなど、LINEで友だちになる程でもない相手に「ヘルプに来てくれてありがとう」といったコメントを送ったりするのにとても便利です。滅多に会わない人にも誕生日に「おめでとう」と送れたり、「パチパチ(拍手の絵文字)」が送れたり。コミュケーションが活発になることで、定着率も上がってきていると思います。
WWD:確かにファミリー感が高まりますね。一方で、残業削減への取り組みも積極的ですよね。
上野:本社・本部では17時50分に音楽が流れ、18時5分に消灯します。それから会議の時間と開催数を約半分に減らし、出席者も最低限に絞るようにしています。店舗ではタイムシフトを毎日作成し、そのスケジュールに従うことで業務効率化を図っています。また、本部からの指示メールなどは15時以前に送るようにして、作業時間を確保できるようにしています。また、ICタグを導入したことで、棚卸時間を削減できています。
WWD:指示のタイミングなど、納得な施策ですね。ところで、オフィスにいくつか風船が浮いていますが、あれは何ですか?
上野:中途で採用された人や新しく異動してきた人の目印です。“新しく来た人”というのが分かると声が掛けやすかったり、コミュニケーションが円滑になるのでは、という配慮です。2週間くらい椅子につけておきます。
WWD:オフィスが楽しそうに見える効果もありますね。真ん中のガラス張りの個室は?
上野:「未来妄想室」です。将来的な計画を練る際のみ使用可能な部屋です。社長の石川(康晴)もよく使用しています。