ドイツに拠点を置くビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)が卸先に対して、自社製品の「アマゾン(Amazon)」での販売を禁止する声明を出していたことが分かった。デイビッド・カーハン(David Kahan)=ビルケンシュトック アメリカズ最高経営責任者(CEO)は取引先に向けたメールで、「『アマゾン』で販売を行った業者に対しては、今後一切の取引をしない」と断言したという。
カーハンCEOは、アマゾンがさまざまなカテゴリーの数万におよぶ提携先に対してアマゾンに在庫を配分してほしい旨のメールを送ったことを知り、このような声明を出した。ビルケンシュトックは商品数拡大を続けるアマゾンの戦略に一切の関心を持たないどころか、第三者が自由に出品・販売できるマーケットプレイスという制度に対して否定的な考えを持つようだ。ビルケンシュトックはブランドの世界観を崩さないよう、自社の商品管理についてこだわりが強い。日本でも自社EC以外のモールへ出店はしているものの、物流拠点を1カ所にしぼり、モールを含めた全ての在庫を自社で管理している。
カーハンCEOはアマゾンの今回の行動について、「非良心的でとても悲しい」と評価。「われわれは今後開拓の余地がある販路だけでなく、ECや実店舗など、すでにさまざまな販売チャネルで(価格や世界観などの)公平性が保たれている場所においても、きちんとブランディングをしている」として、マーケットプレイスによってブランドの世界観が毀損されることに対して懸念を示した。その上で、「『アマゾン』はブランドと取引先との取り決めを破る“非常に効果のある”依頼をした。多くの会社が不正取引に対する責任を負うことになるだろう。私は25年以上この業界で働いているが、ブランドが取引をしなかった場合に、卸先に対してそのブランドの出品を求めるなんて、聞いたことがない」と憤りをあらわにする。
なお、これに対して本国のアマゾン広報は「われわれが目指すのは“世界一顧客を大切にする企業”。マーケットプレイスの拡大は幅広い品ぞろえと低価格、最速の配送を実現するための一つの手段。ある地域にブランドの店舗がなかった時、消費者に対して購入の機会を与えるのがわれわれの役目。ブランドの売り上げにも貢献できるのではないか」とコメントする。アマゾンは顧客至上主義を掲げ、顧客が少しでも満足を得られるよう価格面などにおいて出品者側に制限を設けずに、自由競争できるスタイルを貫いている。これがブランドの世界観を毀損するという意見はこれまでも存在し、最近では「ナイキ(NIKE)」がブランディングを守る目的で、「アマゾン」との直接取引を開始すると発表したばかり。