ファッション

伝説のNYクラブの仕掛け人が東京に相次ぎホテルをオープン その理由を直撃

 ブティックホテルの仕掛人であるイアン・シュレーガー(Ian Schrager)が7月、2020年銀座と虎ノ門にオープンするホテル「エディション(EDITION)」の記者発表会のために来日した。シュレーガーと言えば、ニューヨークに1970年代に伝説のクラブ「スタジオ54(STUDIO54)」をオープンし、一世風靡した人物だ。80年代にはモーガンズ・ホテルグループ(MORGANS HOTEL GROUP、以下モーガンズグループ)を設立し、デザインホテルの先駆けである「モーガンズニューヨーク(MORGANS NEW YORK)」や「ロイヤルトンホテル(ROYALTON HOTEL)」「パラマウントホテル(PARAMOUNT HOTEL)」などをプロデュース。デザインに特化した“ブティックホテル”のコンセプトを広めた。「エースホテル(ACE HOTEL)」や最近、渋谷にできた「トランクホテル(TRUNK HOTEL)」が提案するロビーソーシャライジングはシュレーガーが始めたもの。空間だけでなくサービスまでもユニークなコンセプトでデザインされたシュレーガーのホテルは、宿泊客だけでなく地元の住人らも集まる注目の社交場的な存在になった。彼はデザイナーのフィリップ・スタルク(Phillipe Starck)などとタッグを組み、マイアミやロンドンなどのホテルのプロデュースを手掛ける。

 シュレーガーは05年、モーガンズグループを売却し、自身の名前を冠した会社をスタートし、ホテル事業の他、レジデンスなどを手掛け始めた。グラマシーパーク ホテル(以下グラマシーパーク、GRAMERCY PARK HOTEL)などのプロデュースを経て、11年パブリック シカゴ(PUBLIC CHICAGO)という新たなホテルブランドを自身でスタート。その後、マリオット・インターナショナル(以下マリオット、MARIOTT INTERNATIONAL)とパートナーシップを結び、新たなコンセプトのラグジュアリー・ホテル「エディション ホテルズ(以下エディション、EDITION HOTELS)」に着手する。13年に「ザ ロンドン エディション(THE LONDON EDITION)」が完成したのを皮切りに、ニューヨークやマイアミにも開業。日本では、森トラスト(MORI TRUST)と提携し20年、銀座2丁目と虎ノ門にオープン予定だ。来日したシュレーガーに、マリオットやエディション、そして東京について聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):なぜ、モーガンズグループを売却して自身の会社を設立したのか?

イアン・シュレーガー(以下、イアン):モーガンズグループでは、全てやるべきことをやりつくしたので、自分自身で新しい事を始めたくてうずうずしていた。新たなステージに進むタイミングだと思ったから。

WWD:マリオットと協業するきっかけは?

イアン:ビル・マリオット=マリオット会長がグラマシーパークを見に来ると聞いて、ホテル内を案内したんだ。ビルは私のホテルビジネスに関心を持っていたし、私はマリオットの事をずっと素晴らしいと思っていた。ホテルのツアーが終わる頃には、一緒に手を組もうという話になった。マリオットと私には共通点が多い。お互いにホテルビジネスを革新してきたという点、また、ホテルが提供する空間やサービスの品質へのこだわりは相当なものだ。私自身がクリエイティブ面を担当し、マリオットのホテルビジネスのノウハウやオペレーションが加わればグローバルスケールで展開が可能だと思った。

WWD:マリオットとの役割分担は?サービスの部分に関してはどのように取り組むか?

イアン:基本、私がコンセプトを作り、マリオットはオペレーション面を担当するが、両方が携わるべき部分もある。クリエイティブであるためには、良いパートナーシップが必須だ。一緒に知恵を出し合う方がいいに決まっている。他のマリオットのホテルと異なる「エディション」のカルチャーを作り出すのが私の仕事で、その中には、サービスも含まれる。マリオットはホテルを運営するスタッフ教育のエキスパートだ。もちろん、私も日々のオペレーションに関して指導する。エキサイティングなホテルにするためには、宿泊者、ホテルを利用する人々の存在がカギになる。インフルエンサーやトレンドセッターが集まるような公共エリアをデザインするのも私の役目だ。数カ月話題になってあきられるようなホテルだったら、誰でも創れる。何年間も話題で人が集まるホテルであり続けるためには、これら全ての要素を一緒に作り上げていくことが大切。

WWD:「エディション」のコンセプトは?他のホテルと違う点は?

シュレーガー:私がモーガンズホテルを始めた頃は、サービスに定評のあるザ・リッツ・カールトン(RITZ CARLTON)などはあったが、革新的なホテルはなかった。それでブティックホテルを作ったんだ。それから20年、30年と経過して、革新だけでは十分でないと気付いた。素晴らしいサービスとホテル運営が必須だ。それがマリオットと提携した主な理由だ。マリオットと組むことでブティック・ライフスタイル・ホテルの未来を作ることができる。ホテルの内装や雰囲気が革新的であるだけでなく、そのホテルに滞在する際は、何も犠牲にする必要がないほどの質の高いサービスやオペレーションがあるべき。これらを革新と結び付けるから「エディション」は他のブランドと違う。

WWD:フードやドリンク、エンターテインメントも「エディション」の強みだが、それぞれのこだわりは?トレンドを意識するか?

イアン:もちろん今、何が流行っていて、人々が何に関心があるかということは認識している。今目の前にあるものを自分のバージョンにアレンジするのは簡単なこと。私は、自分のアイデアやビジョンに基づき、次の新しい何か、人々がまだ知らないものを提供し、リードしていきたい。今までもそうしてきた。オリジナリティーとビジョンが「エディション」を他のホテルとは違う特別な存在にする。常に何か次のもの、新しいものを創り出したい。なぜならそれが、人々を興奮させるからだ。

WWD:「エディション」ではどのような建築家やデザイナーとコラボするか?

イアン:優秀なインハウスのデザイナー(建築家)が約10人いるので、インハウスで手掛ける場合もあるし、外部デザイナーと協業した方がいいと思うロケーションはそうすることも。東京は2つとも隈研吾が手掛ける。東京のような都市は、ケンゴ(隈)のような偉大なデザイナーが手掛ける方がいいと考える。外部デザイナーとの協業に関しては、ビジネスプランに支障が起きないようコントロールすることが重要だ。

WWD:モーガンズグループ時代はフィリップ・スタルクとの協業が多かったが、「エディション」で特定のデザイナーとタッグを組む予定は?

イアン:フィリップは本当にすばらしいデザイナーで、ふさわしいプロジェクトがあれば、また一緒に仕事をしたい。今は、私のアンテナにひっかかる特定のデザイナーはいない。とてもいい仕事をしてくれるインハウスのデザイナーらがいるしね。

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