オフショルダーや抜き襟など、2017年春夏の“背中見せファッション”の流行に伴い、女性たちの背中ケア意識が高まっている。とはいえ、自分の目や手が届かず、人からはよく見える背中は、ムダ毛処理もスキンケアも苦労しやすいパーツ。各メーカーやサロンはさまざまな背中ケア商品やサービスを打ち出し、女性たちの悩みに応えている。
「契約者のうち約8割の方が背中のお手入れをしている」と語るのは、美容脱毛サロンのミュゼプラチナム渡部留美子トレーナー。スタッフは来店者のファッションを見ながらアドバイスしているが、「20代女性は背中見せなどのトレンドを追っているため、すすめる機会が多い」と言う。中には腕や脚は自己処理で済ませるが、背中はサロンに任せるという来店者もいるほどで、「自分では見えない部分だからこそ、手入れをする意識は高い」と分析している。
08年から背中用カミソリ「キャミ剃〜る」を販売している貝印も、近年の“背中見せブーム”を実感している。同商品は持ち手が長く、孫の手のように背中の産毛を剃ることができる点が特長。背中パーツに特化したアイテムながら、17年1〜7月の売上数量は昨対比13%増、うち4月から5月にかけての伸び率は約280%だった。
メーンユーザー層は10〜20代。脱毛サロンは敷居が高くても、背中のケアは行っておきたいという乙女心が透けて見える。同社の女性用使い捨てカミソリ「Pretty」シリーズも、T字型のボディー用が前年の2倍と好調で、「『キャミ剃〜る』同様、肌見せファッションの増加によりボディーケアの需要が高まったのではないか」と髙多杏子=貝印経営戦略本部広報・宣伝部は予測している。
背中ニキビ対策にも熱い視線が注がれている。スキンケア医薬品に力を入れている小林製薬は16年、背中のブツブツのための治療薬「セナキュア」を発売した。同社が “肌のブツブツが気になる箇所”について調査を行ったところ、顔に次いで背中の悩みが上位に入り、同商品を開発したという。殺菌や消炎、皮ふ修復に有効な成分を配合し、容器は逆さまにしても噴射できたり、広い範囲にも塗布できるノズルを取り入れたりするなど、使いやすさにも配慮。売れ行きは昨対比20%増と順調で、購入者層の半数以上は10〜20代の女性だ。
美容皮膚科のタカミクリニックも、2010年頃から背中ニキビ治療を目的とした来院者が増加し続けているという。同クリニックではLEDやピーリング、イオン導入、外用薬など、ニキビの状態や原因に合わせて治療法を変える他、ニキビ跡やシミに悩む人には、美白を目的とした光治療なども勧める。
“ニキビ”といってもホルモンの影響による皮脂分泌の増加や、毛穴の詰まりなど原因はさまざま。背中は皮脂分泌が多い部位であるため、アクネ菌の繁殖が原因で起こるニキビ以外にも、マラセチアというカビの一種が増殖する「マラセチア毛包炎」にもなりやすい。
とはいえ、過剰なケアは禁物だ。「ナイロンタオルやブラシ等での擦り洗いや、スクラブのやりすぎにより角質層を傷め、毛穴の詰まりや炎症を悪化させている方や、クリームやオイルの塗布により毛穴を詰まらせている方はニキビができやすくなる」とタカミクリニック本田えり医師。見えない場所だけに気になる背中ケア。もともとトラブルを抱えやすいデリケートな場所だけに、やりすぎには注意が必要だ。