丹野真人「タンタン」デザイナー PHOTO BY KAZUO YOSHIDA
丹野真人が手掛ける「タンタン(TANGTANG)」は、2011年からTシャツだけを作り続けて6年目を迎えるブランドだ。シンプルなデザインながら、ロックとユーモアが絶妙に隣り合う佇まいには、独特の味わい深さがある。現在の卸先は、国内が伊勢丹新宿本店やロンハーマン(RON HERMAN)など30アカウント、国外がロンドンとニューヨークのドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)など5店舗。自身のブランド以外にも「サカイ(SACAI)」のカットソーのグラフィックや、日本のロックバンド銀杏BOYZのツアーTシャツをデザインするなど、Tシャツを軸にした仕事は多岐にわたる。
丹野デザイナーは「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「アンダーカバー(UNDERCOVER)」などを経て、11年に自らのニックネームを冠した「タンタン」を設立した。「中学生時代からパンクバンドやロックミュージシャンのステージ衣装が好きだった。ずっと見ているうちに、ステージのロックスターも、客席のファンも同じTシャツを着ていることに気づいて、『演者と観客の隔たりをなくすTシャツってすごい!』と思うようになっていた。自分でデザインするからにはTシャツだけに絞った方が集中できるし、誰にも負けないモノを作る自信があった」と丹野デザイナー。12年春夏シーズンにファーストコレクションとして30型のTシャツを発表。親交のある宮下貴裕「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST. 、以下ソロイスト.)」デザイナーの後押しもあり、卸先は順調に決まった。
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PHOTO BY KAZUO YOSHIDA
デザインには、昔も今も変わらないこだわりがある。「ボディは、飽きられない形と古くならない素材感にこだわり、10年後も着られるかという基準で選んでいる。Tシャツにも首回り、身幅、袖丈などにトレンドがある。対して自分が好きな80〜90年代のバンドTはずっと同じ形。だからこそ流行に左右されずに、今でも人気アイテムなんだと思う。だからウチのTシャツもほとんど形を変えていない」。
また「タンタン」のアイテムはほとんどが白と黒で、カラーバリエーションを作らないのが特徴だ。「立ち上げの時から、色展開はあまりしないと決めていた。ドレスやジャケット同様に、Tシャツにも『このデザインにはこの配色がベスト』というデザイナーの思いが込められているはず。ずらりと並んだカラーバリエーションは、サービスという点ではいいかもしれないが、デザイン的には投げやりに見えてしまうから」。ブランドの代名詞といえる特徴的なフレーズや単語のプリントについては「日常のちょっとした会話の中から、気になったフレーズをメモしてヒントにしている。カタカナや、他ではやっていないような言葉を、どうすれば世界中でカッコいいと思ってもらえるかを常に考えている」と話した。
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「タンタン」2018年春夏コレクション PHOTO BY KAZUO YOSHIDA
ラックにかかったTシャツ“MILK” PHOTO BY KAZUO YOSHIDA
「タンタン」は現在1シーズンに約50型のTシャツを発表し、どれも単価は7000円前後と決して高くはない。これまでブランドの知名度を上げるようなヒット作があったのかと聞くと、少し考えた後「特にない」と笑う。「ファッション業界を細分化して考え、あえてブランドらしくないところで勝負している。メンズしか作っていないのに女性誌への貸し出しを多くしてみたり、アイドルグループのBiSHのツアーTをデザインしてみたり。『タンタン』といえばバンドTやロックT、みたいなイメージをあえて自分から崩していった方が楽しい」。そう語る通り、これまでのコラボ相手は「ソロイスト.」「サカイ」の他、「フミカウチダ(FUMIKA UCHIDA)」「エレンディーク(ELENDEEK)」など幅広い。
今後もビジネスの大小に関わらず、面白いと感じたコラボやプロデュース業には積極的に取り組んでいきたいという。「Tシャツには可能性がありすぎて、まだまだできることはたくさんある。Tシャツだけでどこまでやれるのか試したい。コラボは、今でも1シーズンに2案件ぐらいは受けている。今後もアパレル、音楽、映画など、ジャンルを問わず挑戦していきたい。かっこいいTシャツを作れば、バンドや映画作品しか知らない人に『タンタン』を知ってもらえるし、『タンタン』しか知らない人にバンドや映画作品の魅力を伝えることができる。その架け橋になれるのが、デザイナーの仕事の醍醐味」。そう語った後「でも、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(RED HOT CHILI PEPPERS)のオフィシャルツアーTシャツが作れたら最高だけど」と続けた。