中国最大手EC企業のアリババがユークス ネッタポルテ グループに投資するという噂や中国第2位のJDドットコムのファーフェッチ(FARFETCH)出資など、ラグジュアリーECの国境を越えた合従連衡が複雑化の様相を呈している。
最大の注目企業はもちろんファーフェッチだろう。まず3月にネッタポルテ(Net-A-Porter)を創業したナタリー・マセネット(Natalie Massenet)英国ファッション協議会会長を非業務執行共同会長に指名した。ジョゼ・ネヴェス=ファーフェッチ創業者兼最高経営責任者(CEO)と共同経営体制をとり、取締役としてファッション業界とのさらなる連携強化に注力する。6月にはコンデナストが運営するECサイト「スタイルドットコム(Style.com)」買収を含む業務提携を発表。「ファーフェッチ」のEC情報とコンデナストが持つコンテンツを組み合わせ、コンテンツ重視の新たなECプラットフォーム作りを目指すという。提携に合わせて、ジョナサン・ニューハウス(Jonathan Newhouse)=コンデナスト会長兼CEOがファーフェッチ取締役に就任した。
ファーフェッチは同じ6月、JDドットコムから3億9700万ドル(約436億円)の資金を調達した。両社は市場規模800億ドル(約8兆8000億円)といわれる中国ラグジュアリーEC市場の開拓に向けて業務提携する。これに合わせて、リチャード・リウJDドットコム創業者兼CEOがファーフェッチ取締役に就任した。一部でIPO(新規公開株)による上場を目指しているとささやかれるファーフェッチだけに、今後も動向を見逃せない。
LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下LVMH)とケリング(KERING)、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT、以下リシュモン)という3大コングロマリットも負けてはいない。LVMHは今年、2つのECサイトを立て続けにオープンした。特に6月にオープンした「24 Sevres」はLVMH傘下の老舗百貨店ル・ボン・マルシェが運営するECサイト。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」をはじめとするLVMHグループの主要ブランドに加えて、競合を含む148ブランドを扱う本格ECモールだ。一方のリシュモン傘下のネッタポルテにアリババが出資するとなれば、3大コングロマリットのラグジュアリーECをめぐる勢力は大きく変わりそうだ。
一見、他社との連携が少ないように見えるケリングだが、実は12年にユークスとジョイントベンチャーを立ち上げている。同企業は「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」などケリング傘下の7ブランドECサイトを手掛けている。ケリングも今後、他企業との連携を含めたさらなる施策に打って出ることはあるのか。中国で自社ECを始めたばかりの「グッチ(GUCCI)」を筆頭に、自社ECの成長著しいケリングの今後にも注目したい。