2017年LVMHヤング ファッション デザイナープライズの特別賞に、ニューヨークを拠点にする日本人デザイナーの赤坂公三郎が選ばれた。赤坂は賞金15万ユーロ(約1920万円)を獲得し、LVMHグループのエキスパートから1年間の指導を受ける。
赤坂は、1984年生まれの32歳。東京都台東区出身で、実家は貴金属の小売業を営んでいる。日本の大学で哲学を学び、ファッションデザイナーを目指すために渡英。セント・マーチン美術大学を卒業後に米トム ブラウン社でメンズデザイナーとして働いた。その後、奨学金を得て、パーソンズ・スクールの大学院へ進学。在学中にはファッションコンペのVファイルズ ランウエイで優勝。卒業後の2016年に「コウザブロウ(KOZABURO)」を本格スタート。17年春夏には、米トム ブラウン社に出資しているストライプインターナショナルの「コエ(KOE)」のメンズライン“コエブルー(KOE BRU)”のデザイナーに就任した。
「コウザブロウ」のスタイルは、1980~90年代のニューウエーブのパンク音楽や、モデルでデザイナーのデイビッド・リンドウォールに影響を受けている。赤坂は「80年代に、中国風や日本風のスタイルを着ていた海外のアーティストたちの“ミスコンセプチュアルなオリエンタリズム”に興味があった。日本人の私なりに解釈し、漢字を使ってグローバルなメッセージを伝えたい」と話す。オリジナルの漢字プリントは、仏蘭西(フランス)や伊太利亜(イタリア)など30カ国の国名を漢字で書き表したもの。30人の異なる国の友人に筆で書いてもらった。アクセサリーは銅製のチェーンを酸化させて制作したネックレスや、実家が営む貴金属屋の背景を使って作り上げたシルバーのバックル付きベルトなどをそろえる。
価格帯はトップス170~860ドル(約1万9040~約9万6320円)、アウター860~3410ドル(約9万6320~約38万1920円)、ボトムス520~2390ドル(約5万8240~約26万7680円)アクセサリー510~2050ドル(約5万7120~約22万9600円)など。現在、取り扱い先はドーバー ストリート マーケット ニューヨークやラフォーレ原宿に出店するフリーギャラリーなど。
18年春夏シーズンから、パリのノーシーズンショールームと契約し、卸先の拡大を目指す。赤坂は「人々に希望と興奮を与えられるようなブランドにしていくことが目標。18-19年秋冬には、そのときにしっくりくる場所でコレクションを発表したい」と語った。
フリーギャラリーの担当者は「雑誌『フリーマガジン』のインタビューページと連動した企画で紹介し、2017-18 年秋冬から店舗で取り扱いを開始した。ブランドとして明確なスタイルを表現しているだけでなく、各アイテムに潜むクラフツマンシップ、リアルクローズの範囲を極端に越してしまうことのない心地良い提案力があり、たくさんの魅力を持ち合わせている」とコメント。
ストライプインターナショナルの篠永奈緒美「コエ」事業部部長は、「赤坂さんがトム ブラウン インターナショナルで働いていたことからつながりがあった。当社で『若手のデザイナーを支援したい』という方針があり、『コエブルー』のデザインを依頼ことになった。赤坂さんは時代の空気を捉えつつ、自身のクリエイティブを明確に持ち、かつそれを貪欲に追求している。海外生活が長いためグローバルな感覚があり、どんな環境でも物おじしない。受賞をきっかけに更なる活躍を祈念すると共に、日本を代表するデザイナーになってもらいたい」と話す。