ネット通販を支えるのは物流と言っても過言ではない。顧客の注文に対して正確かつ迅速に配送を行うことはECの中枢をなす部分だろう。ECだけでなく実店舗も含めた物流の仕組みを考えると、そこには売り上げを最大化させる大きな可能性がある。在庫の持ち方やデータのつなぎ方、ひいてはAI(人工知能)システムを活用した高効率的な物流まで、オムニチャネルを考える上で物流の仕組みは欠かせない。
しかし、EC市場の拡大に加えて当日配送をはじめとする物流サービスの拡充によって、物流会社への負荷が限界に達した、いわゆる“物流問題”は記憶に新しい。アマゾンジャパンの配送を担っていたヤマト運輸は契約の一部を取りやめ、当日配送からの撤退や時間指定の見直しを実施した。ファッションEC業界でもヤマト運輸と提携してきた「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」が配送時間の変更を余儀なくされた。
これら物流問題の解決策として期待されるのがAIだ。AIを活用した配送の効率化はすでに実用化され始めており、2〜3年後にはAIが配送データを管理する“AI物流”が主流になるという意見もある。倉庫で商品を仕分けてトラックで配達をするという物理的な作業に対して、AIを用いれば全在庫をデータ管理し、最大限効率のいい在庫の使い方・発送方法を割り出すことができる。
EC構築と在庫管理を行うアッカ・インターナショナル(以下、アッカ)がその先進例だ。「ライトオン(RIGHT ON)」や「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」の在庫管理も行うアッカはアパレル企業から預った全商品をデータ化して管理。注文ごとにもっとも効率的な倉庫と在庫をAIが推定し、配送を指示する。このAI在庫管理システムでは、売れた数に応じてECサイト上の表示在庫数もAIがリアルタイムで調整するなど、かつてない効率化を実現している。
ユニクロの柳井正・会長兼社長は物流施設を含む新オフィスの発表会見で、「(物流拠点としての設備機能について)あらゆる選択肢・高度化を考えている。現状の物流業界はうまくテクノロジーを使えていない。人海戦術の先に生まれた問題だ。人の力とテクノロジー、情報の力を使い、世界最高の物流サービスを作っていきたい。その上で、物流パートナーに負担がかからないようなサービスを考えていく」と、うまくITを活用していく方針を明言した。
あるIT企業経営者も「(物流問題は)闇雲に人手を増やそうとするから起こる問題。なぜ、在宅を確認せずに荷物を持っていくのか。GPSで自分の荷物の位置をリアルタイムに把握して、在宅か再配達を指定するなど、ITで解決できる仕組みがあるはずだ」との考えを示す。スタートトゥデイの前澤友作・社長も自身のツイッターで「ビジネスチャンス!!」と語ったように、問題をチャンスと捉える経営者は多い。物理的な限界を迎えた物流業界に対して、アパレル業界が講じる次の一手に注目だ。