「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「ヴァンズ(VANS)」などのブランドを保有するVFコープ(VF CORP)は、「ディッキーズ(DICKIES)」などを運営するウィリアムソン・ディッキー・マニュファクチャリング・カンパニー(WILLIAMSON-DICKIE MANUFACTURING COMPANY、以下ウィリアムソン・ディッキー)を、現金8億2000万ドル(約893億8000万円)で買収した。これにより同社の8月14日の株価の終値は、前日終値比3%増の63.5ドル(約6922円)で、ここ一年での最高値を記録した。
スティーブ・レンドル(Steve Rendle)VFコープ社長兼最高責任者(CEO)は、2016年10月に現職に就任したばかり。「17年初めに発表した“2021グローバルビジネス戦略”で、ブランドポートフォリオを強化し、成長を早めることを最優先事項に設定した。今回の買収は、VFコープの将来のための意義のあるステップ。ワークウエアブランドを強化したのは、ワークウエアがプレミアムジーンズやティーン服などの不安定な市場と一線を画すカテゴリーだからだ」と話す。同社が保有する「ティンバーランド」「ラングラー(WRANGLER)」などのワークウエアブランドに、「ディッキーズ」などが加わることになる。同社は「ディッキーズ」を、買収後大きく成長させた「ザ・ノース・フェイス」「ティンバーランド」と同様に成長させる計画だ。なお、同社は「リー(LEE)」「イーストパック(EASTPAK)」「ジャンスポーツ(JANSPORT)」「キプリング(KIPLING)」なども保有している。
ウィリアムソン・ディッキーは1992年にテキサス州フォートワースで創業。「ディッキーズ」のほか、「テラ(TERRA)」「コディアック(KODIAK)」「ワークライト(WORKRITE)」などのワークウエアブランドを保有しており、年商は約8億7500万ドル(約953億7500万円)。フィッリップ・ウィリアムソン(Philip Williamson)CEOは現職に残る。ウィリアムソン同社CEOは「グローバルなワークウエア市場でリーダーシップを維持するために、会社と傘下ブランドを成長させる努力をしてきた。両社の強みを統合することで、従業員、ベンダー、小売りパートナー、最終的には顧客とってもプラスとなる。VFコープのリーダーシップの下、次の成長段階に入り、世界のワークウエア市場のニーズに対応したい」と語る。
VFコープは3月に2021年までに売上高140億ドル(約1兆5260億円)の達成を目標として掲げたが、スコット・ロー(Scott Roe)同社最高財務責任者(CFO)兼副社長は、「21年には、ウィリアムソン・ディッキーが10億ドル(1090億円)以上を売り上げる可能性があると見ている。VFコープの売上高と合わせると、21年には150億ドル(約1兆6350億円)の売上高を達成できるだろう」と話す。
また、17年通期の売上高の見込みを116億5000万ドル(約1兆2698億円)から年間118億ドル(約1兆2862億円)に引き上げた。
クレディ・スイス(CREDIT SUISSE)のクリスチャン・バス(Christian Buss)は、「今回の買収はVFコープの戦略にマッチしている。ブランドポートフォリオの強化だけでなく、スケールメリットとコスト削減、さらに、絶えず変化するアパレル市場から距離を置くことによる、リスク回避につながるだろう」と解説する。