国内シューズブランドで約17年間デザイナーを務めたシューズデザイナーの金子真(42)は、2018年春夏シーズンからメンズシューズブランド「カルマンソロジー(CALMANTHOLOGY)」をスタートする。ブランド名は「CALM(静寂)」と「ANTHOLOGY(詩集)」を掛け合わせた「言葉なき詩集」という造語で、金子デザイナー自身が、20世紀初頭に活躍した仏写真家ジャン=ウジェーヌ・アジェ(Jean-Eugène Atget)の作品を初めて見たときに込み上げてきた言葉だという。“あなたのための靴”を信念に、大人の男性に向け、品を持つ国産最高峰のプレタポルテシューズブランドを目指す。
ファーストコレクションは、アジェが生涯で撮影した約8000枚の風景写真の中の、金子デザイナーがたまたま手に取った12枚から着想。ストレートチップシューズやサイドゴアブーツ、オペラパンプス、ダブルモンクシューズ(8万5000~14万円)などの12型に、上品なアッパーにシャークソールなどのストリートの要素を組み合わせた3型(7万5000~8万2000円)をラインアップする。
いずれも国内工場で一足ずつ丁寧に生産し、製法にもとことんこだわる。例えば、木型は立つ動作と歩く動作の理想形を追求した、独特のねじれのあるデザインを採用。成型工程も通常より増やし、アッパーを木型に合わせる作業“釣り込み”にもわざわざ強弱をつけた。ステッチもインポートブランドの高級シューズが3センチのステッチを15針で縫うところ、「カルマンソロジー」ではより細かく17~19針を落とし込む。金子デザイナーは、「妥協のない成型仕上げが上品で品格のある靴になると信じ、大切にしてほしいという思いを込めて丁寧に作り上げている」とコメントしている。
展示会では新ブランドにも関わらず、有力百貨店やセレクトショップの目利きバイヤーが買い付けた。来春の本格的な販売に先駆けて11月以降、伊勢丹新宿本店メンズ館やトゥモローランド(TOMORROWLAND)、ワイルド ライフ テーラー(WILD LIFE TAILOR)、ビオトープ(BIOTOP)南堀江、イエナ エディフィス ラ ブークル(IENA EDIFICE LA BOUCLE)などで、ブランドの世界観を凝縮したポップアップイベントを開催予定だ。今後はブランドバリューをいかに上げるかが鍵となるだろう。初年度売上高5000万円を目指す。