香港の大手商社リー&フォン(LI & FUNG、利豊)は7億ドル(約770億円)を投じ、同じ香港の世界最大の横編みニットメーカーのサウスオーシャン・ニッターズ(SOUTH OCEAN KNITTERS)と、合弁会社コバルト・ファッション・ホールディング(COBALT FASHION HOLDING)を設立、世界最大規模のニット工場を建設する。出資比率はリー&フォンが62%、サウスオーシャン。リー&フォンは世界40カ国に拠点を持ち、アパレルの生産を請け負う香港最大の繊維商社。一方、サウスオーシャンは「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」や「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」への投資家として知られるサイラス・チョウ(Silas Chou)の本業で、香港の2大繊維企業が手を組むことになる。リー&フォンのウィリアム・フォン(William Fung)最高経営責任者(CEO)は、「投資ではなく、ノウハウを蓄積し、セーターの世界最大の垂直型の生産工場を作ることが目的だ」と語った。
リー&フォンは、グローバル規模のアパレルや小売り業のアパレルOEMを手掛ける世界有数の繊維商社で、親会社のフォン・グループの傘下には、日本の繊維商社であるフォワード・アパレル・カンパニー(旧兼松繊維)もある。リー&フォンは自社工場を持たず、世界各地の有力工場を独自の情報網でつなぐことで効率的な生産網を構築するサプライチェーン戦略を進めていたが、この数年はコスト以上にスピードを重視する新たなサプライチェーン構想を掲げ、構造改革に着手していた。フォンCEOは「われわれはできるだけ早くこのデジタル時代に適合する必要がある」と語る。
ただ、フォンCEOは、世界で進むアパレル生産のオートメーション化には懐疑的だ。「巷でいわれているオートメーション化のほとんどが(半導体やプラスチックなどの)硬い製品で、アパレルのような柔らかい製品のオートメーション化は本当に難しい。多くの企業がトライをしているが、それらは完全な自動化とはいえず、ほとんどが半自動化にとどまっている。本当の自動化の実現には、まだ数年はかかるだろう」。
香港や中国では、大手企業によるサプライチェーンの再編と統合が進んでいる。6月には日本の素材大手の東レが約560億円を投じ、世界最大規模の丸編ニット企業であるパシフィック・テキスタイルズの株式約28%を取得することを発表した。これまでの分散型のビジネスモデルから、垂直統合型の生産システムへの移行が進んでいる。