風水といえば、部屋のインテリアや自然の摂理の力を借りて運気を上げることを想像するだろうが、風水のエキスパート、ティエリー・チョウ(Thierry Chow)によれば、風水はファッションにも活用できるという。
自称“片付けコンサルタント”として活動する、「こんまり」こと近藤麻理恵の著書「人生がときめく片づけの魔法」が全米で270万部を超えるベストセラーとなったことは記憶に新しい。“ときめき”を感じるかどうかを、服を断捨離するか否かの基準として提案していた近藤とアプローチとしては似ているが、チョウは風水をその基準に提案する。
チョウは香港で著名な風水師、チョウ・ホン・ミン(Chow Hon Ming)の娘として生まれ、カナダでアートイラストレーションを学んだ後、5年前にアジアに戻り、父に師事した。男性が多い風水師の中で、彼女はアートをミックスしたモダンなアプローチを確立した。
チョウは、若者にも風水に親しんでもらいたいとの思いから、個人のクライアントを抱える他、ブログでも12支別のファッションアドバイスや、“気”をキープする着こなしの方法などを紹介している。チョウの風水に基づいたファッション観は、ファッション業界でも注目されており、「ゲラン(GUERLAIN)」がキャンペーンに起用。さらに、「マックス アンド コー(MAX & CO.)」や「J.クルー(J. CREW)」もイベントに招待し、朗読会を開催した。
WWD:あなたの仕事を簡単に説明すると?
ティエリー・チョウ(以下、チョウ):今の仕事は風水とデザインにまたがっていて、それをモダンにアップデートすることが最大の目標です。私の仕事は、私たちの精神と身体の健康に影響する環境をどう整えるか、それが全てです。
WWD:風水師の従来のファッションとはどのようなもの?
チョウ:風水師の80〜90%は男性で、女性は私が知る限りでは片手で数えることができるくらいしかいません。そして、伝統的な中国服が普通の風水師の服です。中国の伝統的な職業なので、中国服が一番プロフェッショナルに見えると思っているのでしょう。
WWD:5年前父親に師事していた時と比べて、今の仕事でのファッションは?
チョウ:全く違うものをミックスしたりマッチさせたりする、私らしいスタイルの着こなしが気に入っています。5年前と比べると、ワードローブにはもっとカラフルでエッジーなものが増えました。小さい頃からファッションが大好きで、母が私に着させた服が私好みでないと、機嫌が悪くなる子どもでした。風水の世界に戻ってきたとき、ほかの風水師とは全く違う格好をしていました。でも、伝統的な中国服はもう絶対に着たくありませんでした。
WWD:風水をどのようにファッションに活用している?
チョウ:風水とは厳密に言うと、私たちの気分に影響する全てのものを含む、環境のことです。パーティーや面接に行くとき、着ている服によって自信の度合いが変わるように、服ももちろんその環境の一つです。
私の父でさえ、エネルギーを高め、身なりをよくするために、ヒスイのネックレスを身につけるか、この色を着なさいなどと、クライアントに風水に基づいてファッションのアドバイスすることもあります。私の仕事は、クライアントはそれを発展させたものです。
私はまず十二支のそれぞれの元素を見ることから始めました。五行説では、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなると考えます。木が火を育て、火が土を育て、土が金を育て、金が水、水が木を育てるのです。2017年は火と金の年なので、それを五行の元素でバランスをとります。例えば、卯年の人には、今年は星の変動が激しいので、一つの場所に留まらないでたくさん旅行して、また、卯は木の元素が多いので、ブルーかシルバーを着ると良いでしょうなどとアドザイスします。これを実行すればバランスが取れ、運気が上がります。
WWD:クライアントがあなたを頼りにする理由は何だと思うか?
チョウ:1番の理由は、私がファッションが好きなことが好きだからです。2番目の理由は、私が風水に興味がある人たちのプラットフォームになり、風水に触れる機会を作っているから。たくさんの人に、風水には興味はあるが誰を頼ればいいかわからないと言われます。私の目標は風水の言葉を現代に翻訳すること。私と話せば、風水をより深く理解してくれるんです。
例えば普通、風水師が「ああ、龍が山の上を飛んでいる」と言うところを、私はもっと現代でもわかりやすい言葉で表現します。なぜ龍と言うのかと疑問に思うでしょうが、もちろん龍なわけありません。ここで言う龍とは、山の上を流れるエネルギーのこと、つまり、“気”です。魔法でも何でもありません。
WWD:ビンテージや古着を身につける理由は?風水の観点からすると、服が歩んできた歴史は新しい持ち主に何か影響を与えるのか?
チョウ:それは、前の持ち主がどこからその服を手に入れたか、そして大切に使ってきたかによります。前の持ち主の運が悪ければ、その不運が服にも移るというのが通説ですが、ある程度は本当だと思います。でも、古着を手に取った時、安心できるかどうかもとても大事なのです。また、服の霊魂を新しくする方法もありますが、それはその人の信仰に左右されます。
私は古着探しが好きなので、古着屋も大好きです。特にお気に入りは日本の明治時代とミッドウエスト・ビンテージです。
WWD:仕事で着る服を決めるのに、一番影響与えるもの、もしくは人は?
チョウ:私が日々の生活の中で好きだと思うもの、自然、色、形などから影響を受けています。人ですと、ミシェル・ハーパー(Michelle Harper)やアイリス・アペル(Iris Apfel)のような表現力豊かなスタイリングが好きで、影響を受けていると思います。
WWD:風水師の職業的に着てはいけないものは?
チョウ:厳密に言うと、特に着るものに制限はありませんし、あってはならないと思っています!でも私がなぜ奇抜な格好をするのかと年配の方に聞かれることはありますね。
WWD:ファッショントレンドを追うより、自分のスタイルを貫き通すタイプ?
チョウ:ファッショントレンドを知ることは好きですが、自分のスタイルに忠実であることが大事だと思うので、絶対トレンドを追わなければいけないとは思いません。
WWD:いつも行くお気に入りのショップと好きなブランドは?
チョウ:いくつか通っているローカルなショップがあって、例えばこの靴は香港の銅鑼灣(コーズウェイベイ)のある女性にオーダーしたものです。ブランドは「クロエ(CHLOE)」「セリーヌ(CELINE)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「エムエスジーエム(MSGM)」「モーアンドコー(MO&Co.)」「デルポソ(DELPOZO)」などが好きです。
WWD:最近買ったお気に入りのアイテムと、その理由は?
チョウ:タイのブランド「クロセット(KLOSET)」のドレスと、「エムエスジーエム」のピンクのドレスです。理由は着やすいから。朝パッとすぐに着れるのに、スタイリッシュに見えるんです。5月には日本に行き、古着を購入しました。特に気に入っているのはドレスシャツです。色が本当に好きで、ミックスしがいがあります。