ファッション

話題の大磯・新リゾートスパ 五感をフル活用する“ゆらぎ”体験って何だ?

 8月の終わり、大磯プリンスホテルに新設されたスパ施設「サーマル スパ エス ウェーブ(THERMAL SPA S.WAVE)」を訪れた。JR東海道線の大磯駅から車やバスで約10分。都内からも1時間程度の場所にある同施設は、“日常から解放されたゆらぎの旅”をコンセプトに今年7月にオープンしたスパリゾートだ。施設コンセプトなど全体のプロデュースをトランジットジェネラルオフィスが担当しており、オープン時は大磯プリンスホテル宿泊者専用施設だったが、9月1日に一般開放されたばかり。

 大磯プリンスホテルの歴史は長く、1964年の東京オリンピックで選手村として利用されたこともある。敷地全体は非常に広大で、レトロなボーリング場から1周500mの流れるプールを含む大磯ロングビーチ、テニスコート、ゴルフ場まで、端から端まで1kmを超える。近くに旧吉田茂邸などの歴史的名所も多く、訪れる客層も若者から家族、シニア層、団体客まで幅広い。「さまざまなアミューズメントに温泉や宿泊を自由に組み合わせて楽しめるのが当施設の魅力」とホテルの営業企画担当が話すのも納得だ。そんな大磯プリンスホテル自体も4月に内装をリニューアルした。今回の新館を加えて、さらにパワーアップした印象だ。

 「サーマル スパ エス ウェーブ」は新設されたスパ棟の3、4階にある。スパ棟に入ると、海を一望できる開放的な空間が迎えてくれる。そのまま脇のエレベーターで3階に上がると、スパ専用の受付があった。3階は更衣室と塩分を含む特徴的な源泉を使用した“温泉フロア”となっており、水着に着替えて4階へ上がると、さらに開放的な“スパフロア”が待ち構えている。

 「メーンターゲットは30代女性。丸の内のOLにプレミアムフライデーを利用して来ていただけるような場所を目指している」というだけあって、インテリアも内装も広々と落ち着いた印象を受ける。海とつながって見える話題のインフィニティープールやテラスはいかにも“フォトジェニック”で、平日にもかかわらず、多くの女子やカップルがスマホ片手にゆったりとした時間を過ごしていた。ちなみにインフィニティープールは水温を調整することで冬も営業する予定で、ロングビーチが休みのシーズンでも集客を見込めるように考えたという。実際に利用してみて気付いたが、フロントもスパフロアも開放的な分、時間帯によって全く異なる顔を見せる。朝は静かで、昼は明るく、夕暮れ時は幻想的で、夜はいかにもムーディに変化する。6時半から24時までやっているからこそ、視覚的な変化を楽しみに何度でも利用したくなる理由を肌で感じた。

 視覚的な楽しさは景色にとどまらない。例えば、ニューヨークのスタジオ・ニューワーク(STUDIO NEWWORK)が製作したグラフィックもその一つ。スパには複数のサウナがあって、それぞれ温度も目的も少しずつ異なるのだが、それぞれの温度帯を色で示したアクリルパネルのあしらいは非常に分かりやすい。他にも、凝った温泉マークや更衣室にある手書きの温泉利用案内、季節によって変化するグラフィック・デザイナー永井博の絵など、とにかく見ているだけで楽しいデザインがたくさんあった。

 体験しているうちに気付いたのが、ここは五感を刺激してくれる場所だということだ。前述した視覚に加えて、サウナやトリートメントスパは当然、触覚・嗅覚に訴えてくる。サウナごとに異なる部屋の温度や湿度、ヒノキの香り、水風呂からテラスに出た時に感じる床の熱さ、トリートメント施術を受ける時のオイルの感触や香りなど、挙げればきりがない。巷で温度の異なるお湯を利用した温冷交代浴が流行っていると聞くが、ここではまさに五感を使って温冷交代浴を満喫できる。

 もちろん、味覚も楽しめる。1階にあるレストラン・バー「エス ダイニング(S.DINING)」では、魚介をふんだんに使ったオードブルに始まり、お芋のスープ、パン、オーストラリア牛のフィレ肉、デザートというコースメニューなどが並ぶ。女性にもちょうどいい分量で、色とりどりで程よい味付けの心地良いメニューだ。シェアスタイルのアラカルトもオススメだというので、複数人で宿泊する際にはその方が堅苦しくなく、楽しめそうだ。

 体験・宿泊を通じて、直感的に五感に訴えてくるさまざまな要素がいかに心地よいかを体験した。自然が作る時間ごとのコントラストも、場所ごとに異なる香りも、サウナの温度の違いも、ここでなければ気付かないだろう。これこそが、コンセプトの“ゆらぎ”なのだ。そして、“ゆらぎ”の時間を邪魔しないように部屋には時計がない。そんな配慮も素晴らしい。先に“フォトジェニック”と表現したが、いかにフォトジェニックでもこの体験はSNS上ではできない。SNSといえば、今年はやたらと都会のナイトプールが取りざたされるが、空間のゆとりや時間の流れを考えても、「サーマル スパ エス ウェーブ」は明らかにそれらとは異なる。なにより直感的で本気なのだ。いろんな変化を五感で感じ取る“ゆらぎ”こそ、コト消費時代の究極のアミューズメントではないか。そんなことを切に感じた2日間だった。

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