本連載は、代官山 蔦屋書店コンシェルジュのオススメを幅広く紹介するものだ。今回は、デザイン大国オランダの2人の女性が、紙好きの人たちに向けて作っているクラフト雑誌「flow」を紹介する。雑誌担当の高山かおりコンシェルジュが、こだわり抜かれた紙面作りについて熱く語ってくれた。
「flow」は、2009年にオランダで創刊されたクラフト雑誌だ。アストリッド(Astrid Van Der Hulst)とイレーン(Irene Smit)の2人が、紙好きの人たちに向けて雑誌を作りたいという思いのもと創刊した。同誌の別冊にあたる「flow BOOK FOR PAPER LOVERS」の第4弾が発売した。「『flow』は、オランダ本国で年8回発行されています。英語によるインターナショナル版(2300円)が年4回、約20カ国で各国版も出ています。特別版の『flow BOOK FOR PAPER LOVERS』(3600円)は、年に1冊ずつ発行されています」。
「flow」を知った日本の編集者が国内に紹介したいと考えたことがきっかけで、14年にグラフィック社から本誌を抜粋翻訳した「クラフトアイデア100 for paper lovers」(1800円)も刊行された。「実は過去に日本人も誌面で紹介されているんです。イラストレーター、デザイナーの布川愛子さんで、『flow BOOK FOR PAPER LOVERS』と15年のインターナショナル版にイラスト作品が紹介されています」。
「世界中で雑誌不況が続き、休刊が相次いでいます。そうした状況でも、紙じゃないと伝わらない魅力もあるはずなんです。『flow』には有料のデジタル版もあり、デジタルにも力を入れています。でも手触りや素材使いは紙の雑誌にしかない魅力です。そうした感覚を忘れないでほしい」。
「flow BOOK FOR PAPER LOVERS」は、テキストが一切入っていない誌面構成だ。「レターセットとして使えるようになっています。切り取り線が付いていて、買った人にDIYで楽しんでほしいという思いが伝わってきます。ブックマーク、シールなど付録も毎号さまざまです。飛び出すメッセージカードのような仕掛けもあります。デジタルでは絶対にできないことですよね(笑)」。
作り手の思いやひととなりが伝わってくることも、「flow」の大きな魅力だ。「本誌の表紙タイトル下に短いテキストが添えてあるのですが、毎号言葉が変わります。冒頭の見開きには作り手2人の写真とメッセージが添えられています。別冊の『FLOW LOVE & LIFE』(3200円)は、家族、恋人、友だちとのコミュニケーションを書き込んで周囲の人とともに誌面を作っていく内容になっています!一部のクラフト好きの人たちの間ではすでに人気に火がついていますが、日本での認知度はまだまだ。デザインやファッションに関心のある人にもっと知ってほしいですね」。いつにも増して熱っぽく雑誌への愛を語ってくれた高山コンシェルジュ。ぜひ、「flow」を書店で見て、触って、感じてほしい。
次回の9月28日は、“愛”をテーマにした本を紹介する。意中の人を振り向かせるヒントが見つかるかも⁉︎
今回のコンシェルジュ:高山かおり
代官山 蔦屋書店 マガジンコンシェルジュ。北海道生まれ。某セレクトショップで販売員として5年間勤務後、2012年4月より現職。主に国内の雑誌やリトルプレスの仕入れ、マガジンストリートでのフェア・イベントの企画を手掛ける。