マイケル・コース ホールディングス(MICHAEL KORS HOLDINGS以下、マイケル・コース)が7月に買収を発表したジミー チュウ(JIMMY CHOO)の2017年1~6月期決算は、売上高が前年同期比16.5%増の2億160万ポンド(約286億2000万円)、純利益が同22.4%増の1750万ポンド(約24億8000万円)と増収増益。それを受け、マイケル・コースの株価は前日から約1%上昇し、42.53(約4600円)ドルだった。
ジミー チュウの好調の要因はアジア、とりわけ中国での売り上げが好調だったことにある。日本を除くアジア地域の売上高は3400万ポンド(約48億2000万円)で前年同期比25.5%増。日本も同22.8%増(円換算では同11.0%増)の2860万ポンド(約40億円)と前年からの伸びが最も大きく、メンズラインが特に好調だった。一方で、アメリカでの売り上げは現地通貨べースでは同2.7%減少(ポンド換算では11.6%増)した。
マイケル・コースは、ジミー チュウを買収することでラグジュアリーファッショングループへの第一歩を踏み出した。また、ピーター・ハーフ(Peter Harf)=ジミー チュウ会長も統合の結果、将来的にはラグジュアリー小売業界におけるリーダーシップをとりたいと考えているようだが、現実となるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
マニック・アリアパディー(Manik Aryapadi)=A.T.カーニー プリンシパルは、マイケル・コースがアメリカでラグジュアリー企業としての評価を得るには、最低でも4~5年はかかると分析する。「ここ数年、アメリカの企業はM&Aの際にシナジーやコスト削減について考える傾向にあった。だから、ラグジュアリー企業を目指すのであれば意識を変える必要がある。マイケル・コースはジミー チュウというブランドを大切にする必要があり、シナジーや利益は二の次だ」と話す。
アリアパディー=プリンシパルは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON )やケリング(KERING)などの巨大ラグジュアリーコングロマリットは何十年もの間、ラグジュアリー市場で利益を生んでいるヨーロッパの企業で、ブランドに対する考え方が根本的に異なると説明する。「彼らが成功しているのは、そのブランドを買収してもクリエイティブな面やブランドのディレクションはそのブランドに任せるからだ。ラグジュアリー業界において、『どうやってコスト削減しよう?』ということは考えてはいけない」と話す。
一方で、アメリカの企業にとってはコストの問題や、成長を求める株主の声を無視することは難しい。そのため、ジミー チュウがアジアで好調なことを理由に、同社はアメリカの優先順位を下げる可能性がある。この動きについてアリアパディー=プリンシパルは理解を示す。「今では中国やインドネシアの市場が急成長している。企業が成長市場に投資するのは当然のことだ」と話す。
デビッド・シック(David Schick)=ラグジュアリーアナリスト兼コンシューマー・エッジ・リサーチ ディレクターは、ジミー チュウのアジアにおける好調ぶりはマイケル・コースにとってプラスとなり、お互いが補い合えば良いと話す。「二つのブランドは同じ強み・弱みを持たないし、持つべきではない。地理的な情報やマーケティング、顧客対応のノウハウを共有し合えばよい」と話す。