メルセデス・ベンツ協賛のキエフ・ファッション・デイズ(Kiev Fashion Days)が8月30日~9月3日開催された。「ヴェトモン(VETEMENTS)」のヘッドデザイナー、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の出身地であるジョージアやロシアのゴーシャ・ラブチンスキー(Gosha Rubchinskiy)など東欧・ロシアの異文化ファッション、カルチャーに注目が集まっている昨今、このイベントも徐々に注目を集める用になった。7年目となる今期は「ヴォーグ(VOGUE Italy)」や「Wマガジン(W Magazine)」のエディター、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)のバイヤーなどインターナショナルゲストも駆けつけた。
メーン会場は中心地から北に位置するCECパーコビー(CEC Parkovy)。5日間で57ブランドがショーやプレゼンテーションを行った。経験則の低さからか、まだまだ粗削りな部分はあるが、成長の伸び代は無限大。インターナショナルゲストからも高い評価を受けた3ブランドを紹介する。
アナK(ANNA K)
デザイナーのアナ・カレニーナ(Anna Karenina)は16歳でブランドを立ち上げた。現在21歳の彼女が描くのは、おとぎ話と現実をミックスさせた毒気のあるフェアリーな世界観。すでにパリのコレット(Colette)や伊勢丹などで取り扱われている。ラッフルやフリルなどフェミニンなディテールは今季も健在だが、「これまでになかったスポーティーな要素を加え、現代を生き抜く強い女性をイメージした」と語る。軽やかに舞うオーガンジーのドレスやトップスに、スポーツブラやTシャツ、テキスト入りのベルトを合わせてストリート感を強めた。モデル経験のあるアナ自身が最後のルックをまとって登場し、ショーを締めくくった。
テオ(THEO)
テオ・デカン(Theo Dekan)とオクサナ・デニス(Oksana Denis)の男女デュオによるブランド、テオは2014年にスタート。イタリアの工場で特別な技法を用いて製作するという生地に注目したい。今季の着想源はソビエト連邦時代のワークウエア。とはいえ機能性よりもデザイン性に重きを置き、モダンな日常着に仕上げてみせた。ルック序盤はオーガンジーや麻、コットン素材のサンドカラーのウエアラブルなドレスが続く。中盤以降はプラスチックを加えて作ったというツヤ感のあるダークネイビーの生地が、ドレス、スカート、アウターへと姿を変えて登場した。
アルメタ(AL.META)
エストニア共和国から参加したアルメタは、今季がファースト・コレクション。ニットウエア工場で捨てられる端切れのみを使った、エコ・フレンドリーなコレクションを展開する。生地はカットせず、つなぎ合わせることで可能な限り廃棄物ゼロを目指しているという。「“自然界の変容”がブランドのテーマ。なぜなら自然界こそがこの世で最も才能のあるデザイナーだと思うから」と語るのはデザイナーのジョアンナ・ナーム(Johanna Nurm)。ショーで披露した9体のドレスは、複雑なパターン構成で想定外の膨らみやヒダを作り、食虫植物のような妖しく美しい魅力を放っていた。同ブランドのコンセプトについて「ファッション業界や消費者が日常的に捨てている廃棄物に目を向け、ゴミさえもアートピースになることを提示していきたい」と語った。
ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける