「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」が、「フッド・バイ・エアー(HOOD BY AIR以下、HBA)」を休止したデザイナー、シェーン・オリバー(Shayne Oliver)によるカプセル・コレクション「ヘルムート ラング シーン バイ シェーン オリバー(HELMUT LANG SEEN BY SHAYNE OLIVER)」を発表した。以降「ヘルムート ラング」は、英カルチャー誌「デイズド(DAZED)」の編集長イザベラ・バーレイ(Isabella Burley)が選ぶ若手デザイナーとのコラボレーションを定期的に発表する。イザベラ編集長は、仕掛け人のような立場で「ヘルムート ラング」のリブランディングについて陣頭指揮を執っている。
そんなコラボの第一弾は、果たして、これで良かったのだろうか?そう思わざるを得ないほど、正直「ヘルムート ラング」から遠かった。
ビキニパンツとサイハイブーツの上からジャケットだけを羽織った男性、大きく生地をえぐったボトムスに歪んたブラトップの女性など、コレクションは「HBA」ではあったが「ヘルムート ラング」ではなかった。確かに「ヘルムート ラング」は、穴を開け乳首を露わにするタンクトップや、袖付きのハーネス、生地が薄すぎて何も隠れないドレスなど、ファッションの世界にセックスを持ち込んだ先駆者だろう。しかしシェーンのクリエイションは、数年前の「HBA」と大差なく、違うのはミニマルな素材くらい。フェティッシュの表現方法も彼、つまり「HBA」の世界観を超えておらず、ライン名の和訳が示す「シェーン・オリバーが見た『ヘルムート ラング』」の域に到達していない。
加えて、「HBA」はストリートとフェティッシュ、もしくはストリートとセックスの融合がセンセーショナルでデビュー当初は脚光を浴びたものの、ロゴTシャツやスエット以外のアイテムがなかなか売れず、後年はこうした定番さえ低迷してブランドを休止。このクリエイションでは、ビジネスにならないことは実証済みのハズだ。なのにシェーンは、変われない。ショーのフィナーレには歓声が上がったが、あれは「ヘルムート ラング」としてのクリエーションに対する評価というよりはむしろ、「HBA」のデザインの復活に対して湧き上がったものと考えるべきだろう。
自身の「HBA」なら、何をやっても構わない。しかし、「ヘルムート ラング」でのやりたい放題は許さない。輝かしい歴史のあるブランドにおける身勝手なクリエイションは、「ヘルムート ラング」のファンはもちろん、ヘルムート・ラング(Helmut Lang)本人に失礼だ。
これはシェーンを選び、彼とのコラボも含む新生「ヘルムート ラング」の陣頭指揮を執るイザベラの責任だ。イザベラはシェーンとの協業も含め、「ヘルムート ラング」の向かう道を今一度、真摯に考えるべきだ。先に発表した復刻版については、かつてのファン、もしくはそれより若い世代を存分に刺激している。「ヘルムート ラング」復活の機運は高まっている。だからこそ、確固たるプロジェクトでこのチャンスを確実にモノにしてほしい。