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iPhone8、または初代iPhone発売から10周年を記念してiPhoneXと名付けられると噂されるiPhoneの最新モデルが、9月13日朝2時(日本時間)からの「アップルスペシャルイベント(Apple Special Event)」で発表されるといわれている。
iPhoneはこれまでも産業の歴史を塗り替え、われわれの生活をアップデートし続けてきたが、今回は世界中の3億人強のユーザーが手のひらにAR(Augmented Reality、拡張現実)を収めることができるかもしれない。
ユーザーの視界にイメージのレイヤーを挿入することができるARの技術は、決して新しいものではない。だが、ARはVR(Virtual Reality、仮想現実)とともに、グーグル(GOOGLE)、サムスン(SUMSUNG)、フェイスブック(FACEBOOK)、マイクロソフト(MICROSOFT)など世界の名だたるトップIT企業が開発競争を繰り広げてきた。
6月にアップル(APPLE)は、ARソフトウエアツール“ARKit”を発表した。“ARkit”により、開発者はAR機能をiPhoneやiPadに搭載することができるアプリを開発できるという。「iOS11のリリースと同時に世界で3億人以上がARにアクセスできることになる。アップルの“ARkit”はゲームチェンジャーになるだろう」とベンチャーキャピタル、シャスタ・ベンチャーズ(SHASTA VENTURES)のジェイコブ・マリンズ(Jacob Mullins)社長は話す。
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しかし、AR、VRの技術に注目しているのはIT企業だけではない。ウェブと現実でシームレスなショッピング体験を提供しようともがいてきたリテーラーもだ。なぜなら、ARはショッピングの仕方を一挙に改革する可能性を秘めているからだ。すでにイケア(IKEA)、トムス(TOMS)、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)、セフォラ(SEPHORA)、ロウズ(LOWE’S)といったリテーラーがARを取り入れたプロジェクトを発進している。
米コスメショップのセフォラではARでリップなどのメークをトライできる。イケアのアプリは、ARによる家具配置のシミュレーション機能を搭載しており、検討中の家具の3D映像を、自身の部屋に置いてみて全体の印象を確認することができる。また、多くのブランドがバーチャル試着やバーチャル旅行の技術を、家庭やショップで提供し始めている。
ニーマン・マーカスやユニクロにバーチャルで試着ができるデジタルミラー、“memomi mirror”を提供しているメモミラボ(MEMOMI LABS)のサルヴァドール・ニッシ・ヴォルコウスキー(Salvador Nissi Vilcovsky)創業者兼最高責任者(CEO)は、リテール業界にアップルが与える影響を期待してはいるが、そのアプローチの仕方には懐疑的だ。「リテール業界はこれまでARを実験的に取り入れてきた。だが最近では多くのブランドが実験的段階から生産の段階に入り、ARをショッピング体験の一つとしてショップに取り入れることがスタンダードになってきた。だが、iOSのデバイス上では限界がある」とコメントした。
マリンズは、「アップルはARメガネなるものを開発しようとしているが、われわれがそれを目にするには5年かかるだろう。iPhoneなどのモバイルデバイスにおけるARのユーザーエクスペリエンスの本領が発揮されるのは、ARメガネが発売してからになるだろう。それまでは、まずAR機能を搭載したモバイルアプリが消費者がARに触れる一番の機会になる」と話す。
どんなiPhoneが発表されるか、注目が集まる。