「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」が2018年春夏コレクションを発表し、1週間のニューヨーク・ファッション・ウィークが閉幕した。
今シーズンの「マーク ジェイコブス」は、“SOMEWHERE(どこか)”がキーワード。先シーズンが1970〜80年代のニューヨークなら、今季は同じくらいの時代ながら郊外、そしてさまざまな場所が舞台のようだ。モデルは一様にターバン姿なことから南アジアに思いを馳せたように感じられるが、序盤のジャケットやケープを見ると頭に浮かぶのは欧米。マオカラー風のジャケットからはオリエンタルテイストを感じるし、デフォルメされた鮮やかなフラワープリントを見ると、もはや“どこか”は実在の場所ではなく、架空だったり、夢の世界だったりするのではないか?とも思えてくる。何にも縛られない、限界や境界をフワッと超越してしまうカンジは、実に「マーク ジェイコブス」らしい。
一つリクエストを出すとしたら、今後はもう少しエレガンスの度合いを強めてみてはどうだろう?エレガンス・ストリート(洗練されたストリートスタイル)ではなく、ストリート・エレガンス(ストリート色が滲むエレガントなスタイル)を目指す感覚だ。
デザイナーのマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)がラグジュアリーとストリートの世界を自由に行き来してきた第一人者であることに疑問を挟む余地はない。全盛期の彼は、デザイナーの中でも若手で、新たな感覚は業界を大いに刺激してきた。しかし、最近の「マーク ジェイコブス」のストリートテイストは、正直、強調されすぎて違和感を覚えるほどになっている。そして、得意のストリートテイストについては、若い世代が続々と台頭。齢を重ねたマーク・ジェイコブスが、もはやストリートの先頭に立つことは難しい。
だからこそ、ここはあえて今一度エレガンスに舵を切り、ストリートの発想が滲む洗練のスタイルを見てみたい。振り返れば13年春夏のオプティカルアートや、12年春夏のシースルー、12-13年秋冬のミンクハットのコレクションなどは、エレガントなアイテムをストリートに着崩したり、エレガントが主軸のままストリートアイテムやスタイルを差し込んだりのバランスが素晴らしかった。今シーズンも終盤のイブニングは珠玉のラインアップだった。
ラグジュアリー・ストリートは、若手に任せればいい。マークには、マークにしかできないストリートなエレガンス、コケティッシュなエレガンス、アイロニーなエレガンスがあるハズだ。