ロレアル(L’OREAL)の創業者、ウージェンヌ・シュエレール(Eugene Schueller)の娘であるリリアンヌ・ベタンクール(Liliane Bettencourt)が9月20日、自宅で死去した。94歳だった。ベタンクールはシュエレールの唯一の子どもで、世界一裕福な女性として知られていた。「フォーブス(FORBES)」によると、彼女の資産は446億ドル(約4兆9500億円)で、世界の長者番付では14位だった。
ジャン=ポール・アゴン(Jean-Paul Agon)=ロレアル会長兼最高経営責任者は「会社と従業員を大切に思い、ロレアルの成功と発展に力を注いでくれたリリアンヌに感謝する」と語った。レナード・A・ローダー(Leonard A. Lauder)=エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)名誉会長は「リリアンヌは素晴らしい女性だった。彼女は父親のビジョンが後世にも受け継がれることにこだわった。ファミリービジネスに携わっているわれわれも、創業時からの思いを受け継ぐことへの情熱をわかっている」と話した。
ベタンクールは1922年10月21日にパリで生まれ、15歳で父親が創業したロレアルで働き始めた。50年に政治家のアンドレ・ベタンクール(Andre Bettencourt)と結婚。57年に父親が死去した後、ロレアルの筆頭株主になり、子どもとともに同社の株式の33.05%を所有していた。ベタンクールは公の場には姿を見せることは少なかったものの、母親をめぐり写真家のフランソワ=マリー・バニエ(Francois-Marie Banier)を訴えたり、2010年には当時のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)=フランス大統領候補の選挙活動に法的な上限を超えた額の寄付をした疑いが大きなスキャンダルになった。
なお、ネスレ(NESTLE)も同社の株式23.3%を所有している。ネスレとベタンクール一家は、リリアンヌが存命中および死後6カ月はお互い株式を買い足さない契約を締結している。業界関係者は、リリアンヌの死去はロレアルのオーナーシップには影響がないと見ている。