生産したものを販売する一次流通に加えて、専門業者を介した中古品の買取販売やレンタル事業、フリマアプリといった二次流通(シェアリング・エコノミー)が世の中の大きなトレンドになってきた。低価格でシーズン性・トレンド性の強いアパレル商材は特に、二次流通マーケットの重要な商材となっている。
数年前は“小売のシェアを奪うのではないか”とアパレル業界から敬遠されがちだった二次流通も、今や“共存可能な新事業”と捉えられ、アパレル業界の参入や提携が急増している。今年5月にファッションECの「マガシーク(MAGASEEK)」が古着の買取・販売ECを手掛けるベクトルグループと業務提携をして二次流通市場へ本格参入した他、9月にはセブン&アイ・ホールディングスが新ECモール「オムニモール(omni モール)」内にブランド古着通販「リクロ(RECLO)」を出店した。6月に突如ローンチされた質屋アプリ「CASH」は、ユーザーがスマホで商品を撮影・送信するだけで即査定・現金受け取りが可能とあって、大きな反響を呼んだ。メンテナンスを理由にローンチ後1日で一度閉鎖されたが、初日流通高3億5000万円と、そのポテンシャルに驚かされた。
そんな市況もあってか、取材を進めると「在庫があるだけ伸びるはずなのに、二次流通で使える商品が足りない」という慢性的な悩みが目立つようになった。ユーザーからの買取や出品が資金源となる二次流通産業だけに、各社商品を取り合う在庫不足は深刻な問題だ。
国内ダウンロード数5000万、月間商品取扱高100億円超という圧倒的シェアをほこるメルカリも、ユーザーの出品がなければビジネスは成り立たない。同社は8月、ラグジュアリー・ブランドに特化した新フリマアプリ「メルカリ メゾンズ(MERCARI MAISONZ)」をローンチした。分野を制限することでアプリの利便性を上げ、出品のハードルを下げる狙いがある。
同じように自社アプリの利便性を向上することで顧客・在庫を囲い込もうというのが「ゾゾユーズド(ZOZOUSED)」を運営するスタートトゥデイだ。2016年に開始した“買い替え割”を使えば、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」で新しい商品を購入する際にいらなくなった洋服を同社が買い取り、その金額を購入額から差し引いてくれる。自社での新品購入を促すとともに、成長著しい「ゾゾユーズド」の在庫を獲得できる一石二鳥の施策だ。
一方で、ユーズド品販売などの企業を介す事業の場合、余剰在庫に悩むアパレル企業と提携して一気に商品を集める方法が最も効率的だろう。実際、アパレル業者のシーズン落ちアイテムを買い取って二次流通に活用する業者は多いという。自社ブランドのレンタルサービス「メチャカリ(MECHAKARI)」を運営するストライプインターナショナルも、「ゾゾユーズド」と組んで一度レンタルされた商品をセール価格で販売しており、アパレル企業としては先駆的な提携が業界でも大きな話題となった。
在庫不足を打破する動きはレンタルサービスでも見られる。バッグの定額レンタルサービス「ラクサス(LAXUS)」は1月、在庫不足を解消する施策としてユーザーが使っていないバッグをレンタル商材として利用する新サービス「ラクサス エックス」を発表した。レンタルサービス「サスティナ(SUSTINA)」を運営するオムニスも7月、ユーザーがレンタルした商品の又貸しを認める新サービスを開始した。自社が集められる在庫だけに頼らず、ユーザーから預かった在庫を使ったり、ユーザー同士のレンタルを斡旋したりと、彼らはかつてない在庫の集め方を実現してきた。今後も二次流通産業において、在庫の扱い方がビジネスの中心になることは間違いないだろう。