「ジバンシィ(GIVENCHY)」は、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)=アーティスティック・ディレクター就任後初のショーを、メンズとウィメンズの合同で披露した。
会場はパリ1区の最高裁判所で、ショーの時間は日曜日の朝一番。前任のリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)時代は、夜遅い時間にショーを行っていたのとは対照的だ。座席に配られたリリースには、クレアによる直筆でゲスト一人一人の名前が書かれており細やかな心配りに驚く。
ショーはウィメンズとメンズを交互に見せ、デイウエアからドレスへと展開する構成。ファーストルックはシンプルな金ボタンのネイビーのトレンチコートで、アーカイブからヒントを得たという張り出した肩のラインが強さを盛る。クレアの出身地である英国のトラッドとメゾンのルーツであるフレンチシックのマリアージュが凝縮されたスタートだ。続く多くのルックも強い肩のラインが特徴で、スカート丈は全体的に短く、メンズのパンツはスキニー。これまでのクレアの“ガーリー度”の高いデザインと比べると、かなり強く、シャープな方向性だ。
アニマル柄や赤いレザーなど随所に差し込む赤はクレアいわく『クロエ』時代も含めて初めて使った色」だという。“セダクション(誘惑)”をキーワードに、アシンメトリーなプリーツ、光る素材であからさまでないセクシーを表現するのも、ウィメンズとメンズの共通点。メンズでは特にチェックの使い方などにクレアの出身地である英国の要素がみられる。
リカルド時代の「ジバンシィ」のような強烈なインパクトはなく、特にメンズはグラフィックTシャツが象徴するストリート色の強い刺激に慣れていた目に物足りなくも映るが、逆に言えばリアルな魅力がある。「クロエ」時代にトレンドセッターのポジションを確立したクレアが「ジバンシィ」で期待されるのは、第一にウィメンズのプレタポルテ強化なだけに、創業デザイナー、ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)が残したエレガンスを現代的に再解釈したプレタはビジネスにプラスに寄与しそうだ。ショーではミニサイズ中心だったウィメンズバッグの提案が気になるところだ。