モデルのルイーズ・パーカー(Louise Parker)が、9月30日にパリで開催された「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のショーのフィッティングに呼ばれていたにもかかわらず、ショーに出させてもらえなかったと自身のインスタグラムで訴えた。「バレンシアガ」を擁するケリング(KERING)とそのライバルでもあるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)はモデルのウェルビーイング(身体的、精神的および社会的に良好で幸福な状態)確保のための憲章を9月初旬に、史上初めて共同で発表したばかりだった。
ルイーズは、中指を立てたセルフィーを、「クライアントのために12時間のフライトに耐えて、ショーのために髪を切ることに同意したというのに、次の日得たのはキャスティングキャンセルなんて最高だよね。あなたたちは“モデルの権利”にやっと注目して(しかも私は健康なBMI値の健康診断書も用意してた)、24時間態勢のいわゆるセラピストもいるらしいから、そこに電話したら少しは気が紛れるかも。ヘアカットしてくれてありがとう」という皮肉たっぷりのコメントと、「#fuckyoubalenciaga」のハッシュタグとともに投稿した。
同投稿にはモデルのフェルナンダ・リー(Fernanda Ly)やモデルエージェンシーのソサエティー・マネジメント(THE SOCIETY MANAGEMENT)をはじめ、1800以上の「いいね!」と、170件以上のコメントが寄せられている。米キャスティング・ディレクターのジェームズ・スカリー(James Scully)も、「ルイーズ、今回のことで注目を集めたことによって、君はすべてのモデルと女性に、あなたたちは声を挙げる権利があり、感情を持った人間で使い捨ての労力ではなく、こんな不当な扱いは2度と屈しないということを思い出させてくれた。ありがとう。この闘いが終わるまで、声を挙げるのをやめないでくれ」とコメント。スカリーは、「エルメス(HERMES)」「バレンシアガ」などがモデルを不当に扱ったとする批判をインスタグラムに投稿して同ブランドを炎上させ、ケリングとLVMHの憲章の作成のきっかけにもなった人物だ。
しかし、モデルはショー前に集められるが、不採用になるのはよくある話だとして、虐待的な扱いにはならないとするコメントもあった。
「バレンシアガ」は「ルイーズ・パーカーが2018年春夏コレクションのショーに出られず、失望させてしまったことを心から申し訳なく思っている。われわれとルイーズ・パーカー、そのモデルエージェンシーの間に誤解があったことは残念だ。フィッティングに呼んだからといって、必ずしもショーに出られると確証できるわけではない」と説明した。また、ルイーズのパリへの渡航費用と、フィッティング料は支払い、またそれはショーに出た場合と同額だったと説明。さらに、髪をボーイッシュなスタイルに短くカットすることを依頼したとき、ヘアスタイリストはルイーズから同意を得た長さまでカットしたという。
モデルの労働環境改善などを目指すNPO、モデル・アライアンス(MODEL ALLIANCE)もインスタグラムで「労働環境の改善を目指す憲章を策定する際には、モデルと話し合うことが重要。 キャスティングに関しては明らかに改善の余地がある。例えば、モデルの外見を変える必要がある場合は、書面で仕事内容を確認できれば合理的だろう」と提案している。
LVMHとケリングが発表した憲章は、各モデルにファッションショー開催前6カ月以内に発行された健康診断書の提出を求めることや、専任の精神分析医やセラピストを常勤させることを定めている。
フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)は憲章発表時、憲章の作成にあたりキャスティング・ディレクターや各ブランドの幹部、モデルや仏モデルエージェンシー連合のサイナム(SYNAM)と相談したと語っていた。しかし、「すぐにうまくはいかないだろう。もし憲章の基準に改善が必要なら善処する」とも話していた。