2015年春夏ころから続くデニムブームの中で、強い存在感を示すのが「リーバイス(LEVI'S)」だ。デニムのオリジンとしての立ち位置を確たるものにしながら、往年の名作を現代風にアップデートしたモデルや新ラインの開発で話題を集めてきた。
14年にリーバイ・ストラウス ジャパン社長に就任したパスカル・センコフ(Pascal Senkoff)氏は、デニムブランドをとりまく現状と「リーバイス」の現在について、どのようにとらえているのか。またファッション業界全体の課題である若年層の取り込みやオムニチャネルについて、どのように取り組んでいくのか。
WWDジャパン(以下、WWD):近年の商況は?
パスカル・センコフ=リーバイ・ストラウス ジャパン社長(以下、センコフ):アパレル業界全体が苦境にあるが、リーバイ・ストラウス ジャパンでは卸、小売、ECの全チャネルの業績が成長している。セレクトショップなどのプレミアムゾーン、ナショナルジーンズチェーン(大手ジーンズ専門店)など、価格帯や感度に合わせた商品構成に気を配ったことが要因だ。商品面では、2015年以降に“501”や“505”のアップデートモデルを筆頭にした大きなローンチが続いた。古き良き時代のストーリーある商品を新しく見せることで、昔と今を融合することができたのではないかと思う。特にヒットしたのは今年2月に発売した“501スキニー”。オリジナルのモデルを残しながら新たな選択肢を提供できたことで、かつての「リーバイス」ファンにとっても買い足しのきっかけになったと感じている。
WWD:現在好調なカテゴリーは?
センコフ:ナショナルジーンズチェーンが継続的によく売れていたが、現在はプレミアムゾーンも伸びてきている。ラインでは「リーバイス ヴィンテージ クロージング(LEVI’S VINTAGE CLOTHING)」や自転車に乗るときの快適性を重視した「コミューター(COMMUTER)」、「スケートボーディング(SKATEBOARDING)」などが好調だ。市場がすでに飽和状態である中、従来とは異なる商品を提案する必要性を感じていて、来シーズンは昔の「リーバイス」のワークウエアの復刻品もローンチする。限定店舗から導入し、販路を広げる予定だ。また、卸ではボトムスがメーンになるが、直営店ではトップスやアクセサリーなどバラエティー豊かな商品をそろえ、ライフスタイル全体を網羅するブランドとしての発信を強めていく。現在ショップ・イン・ショップを除いて約60店舗(アウトレット含む)を運営しているが、次の3年で直営店の数を2倍にしたい。
WWD:EC化率は?また今後の強化策は?
センコフ:現在8%程度で、そのうち60%が直営EC、40%が「ゾゾタウン」での売り上げ。「ゾゾタウン」とは“501スキニー”ローンチの際に協業したこともあり、若い女性の利用が多く、成長率が特に高い。ボトムスはEC販売が難しいカテゴリーと言われるが、「リーバイス」についてはすでに1本持っていて、自分のサイズを把握しているという方も多いため、それほど問題とはとらえていない。オムニチャネル化が進み、販路が複雑化する中で、ECは重要なチャネル。3年以内にEC化率10%を目指す。
WWD:環境への取り組みは?
センコフ:環境に配慮する“ネットポジティブ”というCSR戦略に取り組んでいて、25年までに完結させる予定だ。商品の生産工程で使用する水の量を減らしたり、繊維をリサイクルしたりと内容はさまざま。ウォーターレスについてはメソッドを他社にも共有することで、業界全体の発展につなげたいと考えている。また、今後は「リーバイス」のセカンドハンド品を使用したカスタマイズにも着手したい。全く新しい商品を生産するのではなく、すでに存在するアイテムを使用することで、環境への配慮とビジネスを両立させる。カスタマイズは、自分だけの一着を手に入れられるツール。自己主張とも言える特別な一着を求めるというのは、ファストファッションとは相反するものだと思う。
WWD:「リーバイス」が大切にしていることは?
センコフ:「リーバイス」のレガシーを守り続け、ブランドを成長に導くこと。われわれは、自分たちのスタイルを貫きつつ新しい商品を生み出すことに重きを置いている。価格や速さで競争せず、自分たちのペースでよりよいフィットや上質さを追求する、ファストファッションどころか“スーパースロー”な会社だ。10月7日には大阪・心斎橋にアジア最大の店舗をオープンする。全カテゴリーをそろえる“ベストオブリーバイス”な場所にしていきたい。