インスタグラムをはじめとするSNSの隆盛に伴い、写真加工アプリが人気だ。撮影時に肌のアラを隠す美肌カメラアプリ、なりたい化粧を加えるメイクアプリ、目を大きくしたり小顔にしたりと形を修正する整形アプリなど、自分自身を美しく見せるビューティアプリが多数登場。それらのサービスや機能は進化を続け、ビジネスの現場でも活用され始めている。
メイクテクノロジーが運営するビューティカメラアプリ「ビューティプラス(BEAUTY PLUS)」は、国内1500万ダウンロード、メイクアプリ「メイクアッププラス(MAKEUP PLUS)」は同300万ダウンロードと高い人気を誇る。同アプリの特徴は“自然な盛り具合”で、ワンタッチで簡単に加工してナチュラルに見せることができる他、気になるパーツごとの補正も可能だ。
「いかにも加工しましたというよりは、加工しているのを気づかれないくらいにナチュラルに見えることが重要」と佐藤万斐マネージャー。最近は動画を投稿するSNSユーザーが増えているため、美肌加工をして動画撮影が行える機能も追加した。「メイクアッププラス」はバーチャルメイクの他、髪色を変える機能も搭載。髪を1本1本認識してかなり現実に近いヘアカラーを再現できるため、SNS受けはもちろんのこと、美容室でのカウンセリングなどにも使えそうな応用性を秘めている。
国内400万ダウンロードを超えるパーフェクト社のバーチャルメイクアプリ「ユーカム メイク(YOUCAM MAKE)」には現在、外資系から国内大手メーカーまで、30を超えるメイクブランドが参加している。トレンドメイクルックを手軽に体験できる他、パーツごとに参加ブランドアイテムをバーチャルで試すことができるため商品購入前に参考として使う人が多い。
「母体は写真や動画の編集ソフトを作っている会社で、弊社のアプリはその技術を応用して作られている。バーチャルメイクで重要なのは、ARのライブ機能でいかにズレずに、肌やパーツに自然にメイクができるかということ。弊社には長年培ってきた技術力があり、他社と比べてそこが強みだ。かなり現実に近いメイクができ、信頼度も高く、ビジネスシーンでも使用してもらえている」と磯崎順信パーフェクト社長。実際、17年6月にはコスメセレクトショップのフルーツギャザリング 銀座インズ店に同アプリが導入され、消費者が新しいメイクを試すきっかけ作りに活用されている。
17年6月にリニューアルした資生堂の「ワタシプラス カラーシミュレーション」も、資生堂のメーン商品を使ったライブ動画のバーチャルメイク機能を取り入れた。「ECの売り上げが年々高まっており、いつでもどこでもメイクを試したいという声がよく聞かれる。そうしたニーズに応えるためにアプリを作った。ここで使ったアイテムをすぐにECで購入することもできる。売れ筋商品から選ぶ、直感的に色から選ぶなど、さまざまな選択肢を用意したことで、ユーザーが楽しくアイテム選びができるように考えた」(吉川拓伸EC事業推進部マネージャー)。
アメリカではプロ向けのメイクアプリも誕生している。アメリカで1億人以上のユーザーを抱えるビューティアプリ「パーフェクト365」は、メイクアップアーティストの声に応え「パーフェクト365プロ」を作った。デザイン用ソフトウェアやチャットもできる顧客管理システムを搭載し、消費者とメイクアップアーティストをつなぐ。日本ではパナソニックが9月に、デジタルカメラ等で培った画像認識・画像処理技術を活用した「メイクアップデザインツール」を発表した。化粧品カウンターや結婚式場、美容サロンなどでのメイクアップ提案、美容スクールの教材作成やトレーニングなどでの利用を想定している。
多様な広がりを見せるメイクアプリだが、「エンドユーザーが使いやすいかどうか、アプリではそこが一番重要。そこを無視して機能を高めても離れていってしまうだけ」と磯崎順信パーフェクト社長が語るように、大切なのはユーザーの利便性だ。美肌加工やメイク加工などの“盛りセルフィー”を経験して満足感を得ると、次第にアプリが手放せなくなっていくのが女性心理というもの。ビューティアプリは今後、そんな女性たちの美への欲求を受けてどのような進化を見せるのだろうか。