「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」とのコラボで世界を熱狂の渦に巻き込み、5日のブルックリン店オープンにはビル・デブラシオ(Bill De Blasio)=ニューヨーク市長も駆けつけたブランドが「シュプリーム(SUPREME)」だ。一介のストリートブランドから一大注目ブランドへと成長を遂げた「シュプリーム」に、巨大投資ファンドのカーライル・グループ(CARLYLE GROUP以下、カーライル)が投資するという噂が浮上している。
「シュプリーム」とカーライルのスポークスマンからのコメントは得られていないが、もしカーライルが「シュプリーム」に投資するとなれば、両社にメリットがある。カーライルからすれば、定期的にコラボや限定アイテムを次々“ドロップ(発売)”し即完売させ、リテールのルールを塗り替えた、今もっとも成長を遂げているファッションブランドの一つに投資できる。一方「シュプリーム」からすれば、年々競争が激化するストリートウエア界を生き残る資金を調達できる。
「ルイ・ヴィトン」をはじめ、「ストーン・アイランド(STONE ISLAND)」「ヴァンズ(VANS)」「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」などとの多彩なコラボや、ブルックリン店のオープン、最近アップデートし、発売前日から並ばずに入店できるようになったシステムなど、さらにその魅力を高めている「シュプリーム」だが、その教科書に載っていそうなサクセスストーリーは、さまざまな市場に精通し、成長の余地のあるブランドを日々探し続けるカーライルの目にはさぞ魅力的に映ったに違いない。
カーライルはこれまで、スキンケアブランドの「フィロソフィー(PHILOSOPHY)」(2010年にコティ(COTY)に売却)、オーディオメーカーのビーツ・エレクトロニクス(BEATS ELECTRONICS)(14年にアップル(apple)に売却)などに投資してきた。
カーライルのジェイ・サモンズ(Jay Sammons)コンシューマー&リテールチームプレジデントは17年初めに米「WWD」に、「非常に長い期間存続できるビジネスやビジネスモデル、ブランドを探している」と語った。さらに、「伝統的な小売業から現代の小売業へと市場シェアは大きくシフトしている。だが、小売業が死んだ訳ではない。消費者はまだ物やコトを買いたいと思っているが、その嗜好は日々変化している。企業は革新的なアイデアや製品を創出し、われわれはそのアイデアをより速く、より少ない資本での実現を支援できる。だが、伝統的な小売業態では実現に遅れが出じる。技術、革新性、世代などの要素があるが、それが勝者と敗者を分ける問題となる」とも話した。「シュプリーム」はその“勝者”だ。
アンジェロ・バク(Angelo Baque)元「シュプリーム」ブランド・ディレクターは「ルイ・ヴィトン」とのコラボによって「シュプリーム」は何が変わったかと聞けば「いつも通りだよ。コラボまでは俺たちが何者で何をしてるかを知らなかった『ルイ・ヴィトン』の顧客を取り込み、ブランドの顧客層を広げるいい機会になった」と語ったが、思わぬ顧客(?)も手にしたようだ。
なお、「ルイ・ヴィトン」とコラボした際は、「ルイ・ヴィトン」が「シュプリーム」を買収するのではという噂が浮上した。