シュプリーム(SUPREME)が株式の半数を5億ドル(約550億円)で巨大投資ファンドのカーライル・グループ(CARLYLE GROUP以下、カーライル)に7月に売却していたことが明らかになった。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」とのコラボで世界を熱狂の渦に巻き込んでいた時の話だ。取材に対し、カーライルもシュプリームもコメントはしていない。
創業者のジェームス・ジェビア(James Jebbia)は、投資会社に株式の多くを売却するとストリートキッズの間におけるブランドの価値、特に彼が生まれ育ったイギリスでの価値が傷つくかもしれないと考え、交渉は秘密裏に進められた。
カーライルはこれまで、スキンケアブランドの「フィロソフィー(PHILOSOPHY)」(2010年にコティ(COTY)に売却)、オーディオメーカーのビーツ・エレクトロニクス(BEATS ELECTRONICS)(14年にアップル(APPLE)に約3300億円で売却)などに投資してきた。今回カーライルが算出したシュプリームの時価総額は、単純計算でおよそ11億ドル(約1210億円)。これには10億ドル(約1100億円)と見積もる株式と、1億ドル(約110億円)相当の負債が含まれているよう。今回の取引額は、企業価値をEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)の10倍以内と考える一般的なM&Aの範囲内と考えられ、業界筋は妥当と捉えている。
株式の売却益によって、シュプリームは年々競争が激化するストリートウエア界を生き残る資金が調達できる一方、大勢に飲み込まれないインディーズ的魅力を失い、結果、ブランドのファンを白けさせる可能性も否定できない。特に希少性が評価され、商品にはプレミアがつくこともしばしばの「シュプリーム」にとって、仮に得た資金を用い、カーライルとともに出店を重ねるのだとしたら、今までのビジネスモデルは通用しなくなる可能性もある。現に「シュプリーム」は、「ルイ・ヴィトン」とのコラボレーションにおいても、生粋のファンの一部から強烈なバッシングを受けている。
これに対してテキサスとカリフォルニアでスニーカーとストリートウエアのセレクトショップ、ブラック・マーケット(BLACK MARKET)を手掛けるキース・トラン(Keith Tran)共同オーナーは、「資金調達の狙いは、中国と日本だろう。全11店舗のうち6店舗を構える日本では、毎日のように行列ができている。香港に店を構えれば、もっと長い行列ができるかもしれない。『シュプリーム』は中国本土にも、韓国にもショップがない。しかしマーケットは巨大だ」と分析する。