本連載では代官山 蔦屋書店コンシェルジュが、オススメの書籍や映画、雑貨などを紹介する。今回紹介するのは、まるで工芸品のような美しい造形の“ガラスペン”。漫画家が持っているような、ペン先をインク壺につけて書くタイプのペンだ。文具担当の佐久間和子コンシェルジュによると、インク自体もかなり奥が深いそうだが、その話は回を改めて紹介したい。
“ガラスペン”はつけペンの一種で、その名の通りボディーからペン先まで全てガラスで作られている。ボールペンが普及する前には事務用として企業や役所もつけペンを使用していた。「かつてガラスペンは持ち手が竹製の簡素なものが多かったようです。ボールペンが普及してからはボディーまでガラス製の現在の“ガラスペン”のようにより趣味性の高いものが残っています」。ペン先の膨らんだ部分に細い溝が切ってあり、毛細管現象でインクを吸い上げる仕組みだ。溝の本数や長さによって蓄えるインクの量が異なる。
栃木県宇都宮市に工房を構える川西硝子の“ガラスペン”は、1度インクをつけるとはがき1枚程度の文字量を書き続けることができる。価格はおよそ7000〜3万円。「創業者の川西洋之さんは書くことに強い関心を持っており、滑らかな書き心地を生み出すべく研究を続けています。2層になったガラスの内側をねじることでペンに模様を入れるなど、見て楽しめる美しさも特徴です」。実際に書いてみると、スラスラと文字を綴ることができストレスを感じさせない。
がらす工芸札幌は、硬質ガラスと呼ばれる素材で“ガラスペン”を製造している。「実験器具にも使われる丈夫なガラスを使うことで、技術的に難しい砂入りのペンを作っています。ペンのボディーに色つきの砂が入っており、砂時計のように内部を流れるようになっています。羽根つきのペン置きもかわいらしいですよね」。砂入りの“ガラスペン”は5000円。
“ガラスペン”は、万年筆のようにインクを入れ替えなくてもさまざまな色を楽しめることが大きな魅力だ。現在インクは400色以上が販売されているという。手入れも水で洗うだけと手軽だ。「自分へのご褒美やギフトとして購入するお客さまが多いですね。自分ではなかなか手が出ない高価なものなので、もらうととてもうれしい一品でしょう」。
次回は10月26日に掲載予定。
今回のコンシェルジュ:佐久間和子
フリーのイラストレーターや、総合文具店の販売員を経て、代官山 蔦屋書店で文具コンシェルジュの職に就く。万年筆を中心とした高級筆記具と、金属加工技術を応用した卓上プロダクトに精通し、売場のMDから接客販売までを手掛けている。ツイッターでは公式アカウント「代官山 蔦屋書店 文具(@DT_stationery)」の中の人を担当している。