ファッション

「MCM」がベルリンでのイベントを皮切りにリブランディングに着手 アートや音楽とのつながりを強化

 「MCM」は、10月4日と5日の2日間にわたりドイツ・ベルリンで行ったイベント「ビバ MCM!ビバ ベルリン!(VIVA MCM! VIVA BERLIN!)」を皮切りにリブランディングをスタートした。1976年に当時ドイツにおけるクリエイティブ・カルチャーの中心であったミュンヘンで誕生した同ブランドは、80年代から90年代前半にかけてアイコニックな“ヴィセトス(VISETOS)”柄のアイテムで一世を風靡。しかし、その後ビジネスが低迷し、2005年に韓国のソンジュ・グループが買収し復活を遂げたという背景にある。また、Kポップスターが使用する派手なデザインのイメージも強く、韓国をはじめアジアでの存在感が非常に大きい。今回のイベントは、ブランドのルーツに立ち戻り、現在ドイツにおけるアートや音楽などの発信地になっているベルリンのクリエイティブなコミュニティーとのつながりを深めることが狙い。ミレニアルズをはじめとする若い世代にも訴求しつつ、クラフツマンシップに支えられた高品質な製品を提案するブランドへの回帰を目指す。

 イベントの鍵は、今のベルリンを代表する影響力の大きなパートナーとタッグを組んだことだ。まず4日には、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「ロエベ(LOEWE)」「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」などを取り扱う人気コンセプトショップのザ・ストア(THE STORE)で、“トラベル&ミュージック”をテーマにしたパーティーを開催した。会場には、アート・ディレクターのニコラ・サントス(Nicolas Santos)が手掛けたインスタレーションを展示。レコーディング・スタジオの壁に使われる吸音材やクラブに見られるスポットライトなど音楽にひもづく要素をちりばめたセットに、これまでに発売した「フェノメノン(PHENOMENON)」やクレイグ&カール(CRAIG&KARL)とのコラボアイテムなどさまざまなバックパックを並べた。また、クラブカルチャーが根付く街らしく、ベルリンを拠点にするFJAAKやPeggy GouらがDJプレーを披露。現地のメディアやインフルエンサーに加え、ヨーロッパやアジアからの招待客など計200人以上が集まった会場を盛り上げた。同店のクリエイティブ・コンサルタントを務めるシリア・ソルフ(Celia Solf)は、今回のイベントについて「私自身もミュンヘン出身で、母が使っていたから『MCM』のことはよく知っているし、クラシックでいいブランドだと思う。でも、今の若い世代には『MCM』のことをよく知らない人が多いことも事実。そのリバイバルの始まりをこういう形でたくさんの若い人を交えて祝えてうれしい」と語った。

 5日には、1960年代に教会として建てられた建物を使い、気鋭アーティストの作品を紹介する「ケーニッヒ・ギャラリー(KOENIG GALERIE)」で、晩餐会を開いた。会場では、“アート&トラベル”をテーマに、作品を運搬する際に使う木箱やパラシュートクロスを用いて、アーカイブを含めたラゲージを展示。さらに、同ギャラリーを拠点にするアーティスト集団によるレーベル「ケーニッヒ・スーベニアー(KOENIG SOUVENIR)」とのコラボレーションのプレビューとして、作業風景のインスタレーションを披露した。今のファッションシーンに欠かせないストリート感を取り入れたコラボアイテムは、12月のアート・バーゼル・マイアミビーチで正式に発表される予定だ。ディナーは一つの長いテーブルを約40人のゲストが囲み、“家族で食事をするように”というコンセプトにちなみ数人ずつでシェアする料理が振る舞われた。

 2日間のイベントには、キム・ソンジュ(Kim Sung-joo)=チーフ・ヴィジョナリー・オフィサーも出席。「12年前に『MCM』を危機から救い、アジアでのビジネスが成功を収め、現在は40カ国に500店舗を構えるまでに発展した。真のグローバル・ラグジュアリー・ブランドとして、創業の地ドイツに戻り、素晴らしいパートナーとともにイベントを開くことができて非常にうれしい。ベルリンは、アート、ファッション、エンターテインメントが融合し、アンダーグラウンドとメーンストリームが混ざり合う街。『MCM』は積極的にクリエイティブなカルチャーとのつながりを深め、アートや音楽が持つ美しいメッセージを伝えることで、若い世代を育てていく媒体でありたい。12月のアート・バーゼルをはじめ、今後のプロジェクトにも期待していてほしい」と話した。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。