ファッション
連載 パリ・コレクション

「コム デ ギャルソン」のショーは心を映す鏡? 川久保さんにも聞いてみました

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のショーほど、見る人によって受け止め方が違うものってないのかもしれません。「人」というより「心の状態」というほうが正しいかも。特に今シーズンは、ショーを通じて自分自身と対話しているように感じました。そして、見る人が感じたことが“答え”であって、“正解”はなく、アート鑑賞に近いのかもしれません。

 そもそもショーは新作発表の場ですが(もちろん「ギャルソン」にとってもそうで、展示会にはコレクションの要素をちりばめたウエアラブルなアイテムがズラリと並んでいます)、「ギャルソン」の場合は、ショー自体が厳かで儀式的なムードがあります。見る人も、川久保さんのクリエイションに真剣に向き合おうとしているし、そういったショーを見せ続けていることも、世界で高い評価を受け続けている理由の一つなのでしょう。

 今シーズン、とりわけ印象的だったのは、少女性の強いモチーフを使ったシーンでした。無垢でまっすぐな女の子の気持ちを幾重にも重ねたようにも感じられて、そのまっすぐさ故、何か純粋であることが持っている凶器を見ているようにさえ感じたからです。人のそういう心の状態を見るのって、ズキンと心が痛みませんか?

 さらにショーが進むと、一見ガラクタ(=女の子のおもちゃ)をたくさんくっつけた洋服が出てきます。「好きなモノ全部手放せない!」という執着心にも見えてきます。誰もが持っている執着心、できれば隠したい執着心が、ドカンと巨大な服というよりもはや造形物になって出てくるものですから、怯みますし、圧倒されます。人の執着心が可視化したらこんな感じかも、とも思えてきて、みんな、ああして体にたくさん小さい何か(執着しているもの)をくっつけて歩いているのかもしれないなあなんて……。

 ショー終了後にバックステージに飛び込み、川久保さんに聞いてみました。コレクションのキーワードは「立体的なグラフィティー」(詳しくは10月9日号のパリコレ速報をご覧ください)だそう。確かに、アート作品が立体の上にコラージュされていてグラフィカル!さらに強く心に残った女の子のモチーフのことを聞くと、「わからないわ……」と一言。見る人が感じたことが答えなのに愚問だったと後悔しました。でも、どうしても聞いてみたかったのです。

 今回のパリコレ取材を通じて、パーソナルな部分に届くようなアプローチにとても心揺さぶられ、改めてその重要性を感じました。AIの進化、自動化や機械化が進む中で、改めて人間がまだ機械に勝てることって何だろうと考えた時、心を揺さぶる何か、だと思ったからです。その一つがファッションデザイナーの仕事にあると実感しました。「ギャルソン」とは異なるアプローチで揺さぶられたショーについてはまた別のコラムで。

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