ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)の「アナザーエディション(ANOTHER EDITION)」を立ち上げから2015年まで担ってきた森由美・前ディレクター兼デザイナーが、個人で新ブランド「スタイル ウォーズ(STYLE WARS)」を立ち上げる。一点モノのリメイクブランドで、パートナーとして、エルサレム出身で、モロッコ在住のアートシ・イフラク(Artsi Ifrach)「メゾン アルチ(MAISON ARTC)」デザイナーと組む。17~19日には渋谷区神宮前のジョイント原宿(JOINT HARAJUKU)で、クロスボーダーで作り上げた高度なミックスカルチャー感を感じさせるデビューコレクションを披露する。
アルチの愛称で知られるイフラク・デザイナーは、プロのクラシックバレエダンサーとして活躍した後、パリやアムステルダム、東京など世界中を旅する中で出合った古着やカルチャーをインスピレーション源にしたコンセプチュアルな服を独学で作り、パリ・オートクチュール・ファッション・ウイークで発表している。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のデザイナー川久保玲がディレクションするドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で昨年5月発売したエクスクルーシブコレクションは期間中に完売。また、彼自身の装いやクリエイティビティーが評価され、仏カール・エディション(KAHL EDITIONS)から「ARTC Piece of mind by Artsi Ifrach」が刊行されたのに合わせて、10月に来日し、東京アートブックフェアでサイン会を行ったり、蔦屋銀座(TSUTAYA GINZA)でトークショーを行うなど、じわじわと注目を集めている人物だ。
森デザイナーは4年前、初めてモロッコを訪れた際、マラケシュでアルチと「運命の出会いをした」という。モノの作り方や考え方が似ていると共感。いつか一緒にモノ作りをしようと語り合い、今回のブランド設立に至った。
モロッコのアルチから送られてきた古着やビンテージのテキスタイル、付属などを、東京で森が自由に組み合わせ、さらにモロッコでアルチが一ひねり加えたり、アルチザン(職人)によって手刺しゅうを施す。ナチュラルでアップサイクリングでクリエイティブでミックスカルチャーなクチュールドレスが出来上がる。
森デザイナーは、「彼のアレンジメントが加わることで、想像以上のものが出来上がる。東京で撮影したビジュアルもコンセプチュアルを突き詰めていて、とにかく面白い。今までアパレルブランドで、パターンを引いて、生地を買って、コストを考えながら大量生産するなどシステマティックなモノ作りの中で何とかクリエイティブなことができるように考えていた。でも、今回は全く異なり、リメイクを通じていかにクリエイティブで、より価値のある一点モノを作れるかに挑戦している。自分のメモリアルとなるような、想い出になる服を作り出すことで、何かを感じ取り、気に入ってもらえればうれしい」と話す。
アルチは「過去を解体し、現在に作り替え、未来につなげていく。ファッションは大切だけれども、それ以上に、カルチャーをリスペクトし、つないでいくことが重要だということを伝えたい。また、ファッションは産業として大きな影響力がある。クリエイティブなものであるからこそ、環境や地球のことを本気で考えたモノ作りをしていくべきだ。私たちは誰が買うのかを考えるモノ作りはしていない。自分たちが着たいものを作り、それに共感したり、面白いと思ってもらえれば」と語る。
ファーストシーズンは日本を象徴する着物をリメイク。モロッコの民族衣装であるジュラビア風に仕上げたものや、東京らしい要素を取り入れるべく、ベースボールシャツやメッシュなどのスポーツ要素やプリーツなどを組み合わせたドレスなどがラインアップする。