アシックス(ASICS)はこのほど、新たなシューズの生産方法として、靴底を素早く成形する新技術を台湾のベンチャー企業である達音(TAYIN=ターイン)創研と開発した。電子レンジと同じマイクロウェーブ技術をミッドソールの成形に応用したもので、アシックスによると、従来の発泡技術で30分かかっていた成形を、わずか15秒で完了できるという。数年内の実用化を目指す。アディダス(ADIDAS)やナイキ(NIKE)などの大手ブランドは3Dプリンターや編み機を使って、顧客の好みに応じてスピーディーに生産する“マスカスタマイズ”製造技術の開発を加速しており、アシックスも独自技術で対抗する。
マイクロウェーブ成形法を使うと、従来に比べエネルギーの消費量を約90%削減できる上、簡易な設備での生産も可能になり、トリミングなども必要なく、素材やカラーなども自由に選択して成形できる。アシックスはこの技術を進化させることで、店頭でのカスタマイズサービスにつなげる考えで、ポール・マイルズ=アシックスグローバルマーケティング統括部長は「今後シューズ愛好家がその場で自分のシューズをカスタマイズする、そんなスタイルが実現する可能性を秘めている」とコメントしている。
新たなシューズの製造方法の開発は、国境を越えたサプライチェーンの再編につながりそうだ。アディダスは、革新的な生産スピードを持つ3Dプリンターメーカーのカーボン(CARBON)社と組み、ソール全体を一気に生産する技術を確立。ドイツ国内に建設した、ロボットを使ったシューズのオートメーション工場“スピードファクトリー(SPEED FACTORY)ではドイツのニット機大手、ストール(STOLL)社と組んでニットスニーカーを生産している。
一方で、3Dニットの生産技術では、ストール社のライバルで、縫い目のない「ホールガーメント(WHOLE GARMENT)」を開発した日本の島精機製作所の方が進んでいると言われており、島精機もシューズ専用の「ホールガーメント」機の開発に着手するなど力を入れている。
また、シューズの生産は中国とベトナムに、それぞれ20万人が働く巨大な工場を擁し、年間3億足を生産する宝成(ポウチェン)工業が圧倒的なパワーを持つODMメーカーとして君臨してきたが、そうした構造も変わる可能性がある。