AI(人工知能)を使ったパーソナル・スタイリング・サービスを伴うECの「スティッチ フィックス(STITCH FIX)」が株式公開(IPO)に踏み切る。公開する株数や公募価格などは明らかになっていない。宅配サービスの利用者数を伸ばすとともに、サービス強化のM&Aに向けた資金確保が目的だ。
IPOに伴い、これまでベールに覆われていたスティッチ フィックスの規模や財務状況が明らかになってきた。
2011年に現在34歳のカトリーナ・レイク(Katrina Lake)が創業した同社は7月29日現在、220万人の利用者を抱えている。この数字は、16年にサービスを利用したユーザーで、現在その数はさらに増えていると考えられる。ちなみに14年は26万1000人だった。ただ、ユーザーは会員登録から6カ月以上が経過すると購入する洋服の点数を絞ったり、予算を減らしたり、すべてを返品したりと購入額を抑える傾向にあるという。
年商は14年の7320万ドル(約82億円)から17年(7月29日終了)には9億7710万ドル(約1094億円)に急上昇。ただ上述の通り、ユーザーは利用歴が長くなるごとに購入額を減らす傾向にあり、売り上げ増は新客増に支えられている。純利益は、15年は2090万ドル(約23億4000万円)、16年は3310万ドル(約37億円)と順調だったが、17年は59万4000ドル(約6650万円)の赤字に転落。新客獲得のための広告宣伝費などがかさんだほか、ウィメンズのプラスサイズやメンズなどの新規事業への投資も影響した。一方で広告宣伝の成果もあり、昨年12月から今年5月にかけての調査によれば、世帯収入が5万ドル(約560万円)以上で21〜65歳のアメリカ人女性における認知率は41%まで増加しているという。
現在、同社の株は、投資会社のバセリン・ベンチャーズ(BASELINE VENTURES)が28.1%、ベンチマーク・キャピタル(BENCHMARK CAPITAL)が25.6%、レイク創業者が16.6%を保有している。
スティッチ フィックスは会員登録時に85の項目を質問することで、利用者の嗜好や予算、体型に応じた洋服を提案。利用者は、自宅に届く洋服を気に入ればそのまま受け取り、気に入らなければ返品する。キープした洋服の代金だけがクレジットカードから引き落とされるビジネスモデルを確立している。今後、ゼロに等しい海外ビジネスに挑戦するのか否か、注目が集まる。