今年は日本とデンマークの外交関係樹立150周年です。これを記念し10月8~13日、デンマーク王国皇太子同妃両殿下(以下、両殿下)が来日し、都内の各所でさまざまな記念イベントが行われました。デンマークといえば、「世界一幸福な国」として知られています。今年の世界幸福度報告書では、ノルウェーにトップの座を譲ったとはいえ、1位の座に何度も輝きました。今年51位にランクダウンした日本から見れば、社会の仕組みからライフスタイルまで参考にするべき点が多くある国です。
ファッションでも、デンマーク特有の価値観が広まりそうです。「ユニクロ × イネス・ド・ラ・フレサンジュ(UNIQLO x INES DE LA FRESSANGE)」の初のメンズラインのテーマはデンマーク語で“心地よさ”や“温もり”を意味する「ヒュッゲ(HUGGE)」。イネスはインタビューで「全世界的に、調和とか平和とかウェルネスといったものを求める方向に向かっている」とコメントしています。1980年代に「シャネル(CHANEL)」のカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のミューズを務め、今も“パリジャン・シック”を象徴するファッション・アイコンのイネスも注目するデンマークの魅力に迫ります。
民主的で普遍的な価値を提供ふと周囲を見回すと、デンマークのブランドは意外と身近なことに気づきます。ファッションでは「バイ マレーネ ビルガー(BY MALENE BIRGER)」やプレミアム・レザー・ブランドの「エコー(ECCO)」が代表的。ライフスタイル関連では、北欧名作家具の「フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)」や「カール・ハンセン&サン(以下カール・ハンセン、CARL HANSEN & SON)」、根強い人気のテーブルウエア「ロイヤル コペンハーゲン(ROYAL COPENHAGEN)」、シルバーウエア&アクセサリーの「ジョージ ジェンセン(GEORG JENSEN)」などが挙げられます。おもちゃの「レゴブロック(LEGO)」もデンマークのブランド。日本を拠点にフラワーアーティストして活躍するデンマーク出身のニコライ・バーグマン(Nicolai Bergmann)は誰もが知る存在です。
業種を問わずデンマークのブランドに共通するのは、民主的で普遍的な価値と快適さを提供している点。デンマーク王室御用達の「エコー」はコンフォート・シューズのパイオニアともいえる存在。コンフォート・シューズの概念をパンプスに反映した“シェイプ”などでも注目を浴びています。
「フリッツ・ハンセン」や「カール・ハンセン」は、時を経ても変わらない機能美を持つ家具を作り続けています。ミニマルでクリーンなデザインは、日本の家屋とも相性がよく、多くの消費者から高い支持を得ています。両殿下の来日中には、デンマーク・ブランドの魅力を発信するさまざまなイベントが開催されました。
デンマーク王室はタフでなければ務まらないデンマーク王室は、「国民に開かれた王室」として知られており、王族が自ら車を運転してショッピングに出かけることがあるそうです。両殿下は2000年にシドニーオリンピックで出会い、04年に結婚。メアリー妃はオーストラリア人として初めてヨーロッパの王室に入りました。現代のシンデレラ・ストーリーを地でいくメアリー妃は、その美貌とファッション・センスでイギリス王室のキャサリン妃とよく比較される存在です。来日中も、「プラダ(PRADA)」や「エトロ(ETRO)」を着こなしていました。足元は「ジャンヴィト ロッシ(GIANVITO ROSSI)」のハイヒール。メアリー妃はどうやら、イタリアのブランドがお好きのようです。
来日中に両殿下は、デンマーク企業の強力なサポーターとして、超アクティブに活動。到着当日、エコーがデンマークのヘルスケア企業と東京・豊洲公園で開催したイベント「デンマーク フェス&ウォーカソン」の特別ゲストとして、約5.6㎞を歩かれました。「エコー」のファンというフレデリック皇太子もメアリー妃も「エコー」のシューズを着用。東京の下町風景を楽しまれたそうです。ウォーカソンとは、ウォーキングとマラソンを掛け合わせた造語で、参加者が1㎞歩くごとに100円がNGOやNPOなどに寄付されるというものです。「エコー」は1999年からウォーカソンを世界中で開催しており、日本では初めての開催。1765人が「エコー」のシューズを履いて参加しました。
今回の来日で驚いたのは、両殿下のスケジュールです。到着当日はウォーカソン参加だけでなく、天皇皇后両陛下との昼食会や皇太子殿下主催の晩餐会や金沢訪問、11日には目黒雅叙園で、12日にはデンマーク大使公邸で開催されたデンマーク企業の交流イベントに参加。来日中にフレデリック皇太子は東松島市を、メアリー妃はふなばしアンデルセン公園を訪問されました。同妃は12日午後、「フリッツ・ハンセン」「ロイヤル コペンハーゲン」「エコー」の旗艦店を視察されるなど、「国民に開かれた王室」を日本でもアピール。滞在中のなんとも多忙な両殿下のスケジュールに、デンマークという国の“隙間のない外交”と“民主的なシステム”が実践されていたと思います。世界中さまざまな国に王室はあるといえども、デンマーク王室の一員はタフでなければ務まらないと実感しました。