資生堂がロレアル(L‘OREAL)出身のアントニオス・スピリオポウロス(Antonios Spiliopoulos)を採用したのは競業避止義務契約(一定期間、同業他社への転職を制限する契約)に違反しているとして、ロレアルは24日、彼の雇用を止めることなどを求め、ニューヨーク地方裁判所に訴えを起こした。訴状などによるとロレアルは、6月に退社したスピリオポウロスとの競業避止義務契約は、11月まで続いていると主張。これに対し、資生堂は係争中ゆえコメントは差し控えるとしている。
ロレアルによると、アメリカ市場を担当するコンシューマー・グッズのシニア・ヴァイス・プレンジデントを務めたスピリオポウロスは、同社の“パーソナライズ・コスメ”への取り組みに精通していると主張し、ギーヴ・バローチ(Guive Balooch)=グローバル・ヴァイス・プレジデントは訴状の中でパーソナル・カスタマイズが可能な製品は、「ビューティ業界における最も革命的なイノベーションの一つ」で、スピリオポウロスはその中核を担う人物だったと主張する。スピリオポウロスは「ランコム(LANCOME)」の「ル ティント パティキュラー ファンデーション」の開発に関与。これは特別な機械で肌をスキャンした後に個別調合したファンデーションを販売するもので、現在はノードストロム(NORDSTROM)が試験的に運用している。バローチ=グローバル・ヴァイス・プレジデントは、「秘密裏に進めたカスタマイズ・コスメのプロジェクトは、ロレアルが人種も肌質も関係なく、すべての消費者に対応可能な製品を作るためのもので、守られるべきもの」と主張する。「ランコム」での成果を踏まえ、スピリオポウロスはロレアルが抱えるラグジュアリー・ブランド全般を担当するポジションに昇進したが、彼はヘアケアを含むロレアルの全事業に携わりたかったようだ。スピリオポウロスは「ル ティント パティキュラー ファンデーション」に関する事業の収支や広告宣伝費、原材料の調達先などを知る存在といい、こうした情報は「カスタマイズ・コスメ市場の攻略を狙う資生堂にとって、貴重なものになりえる」と話す。バローチ=グローバル・ヴァイス・プレジデントは、資生堂傘下の「ベアミネラル(BAREMINERALS)」によるサイト上でのカラーマッチ診断などについてスピリオポウロスと話し合っていた。
資生堂は1月、デジタルのスタートアップ企業マッチコー(MATCHCO.)を傘下に収め、4月以降「ベアミネラル」でその技術の登用を本格化している。
とはいえバローチ=グローバル・ヴァイス・プレンジデントは、「資生堂のデジタル技術は店頭展開が不十分で、オンライン上のイノベーションも改善の余地が大きい。スピリオトポウロスの知識は、大いに役立つだろう」としている。