これまでにも美や健康、ダイエットの意識が高い人たちの心をくすぐる言葉が多数生まれてきたが、2017年に注目を集めている言葉が“ギルトフリー”だ。 ““罪悪感がない”という意味で、“ギルティーフリー”とも言われる。
ギルトフリーとは主に、間食の際に感じる「食べたら太るかも」「体に悪いかも」といった後ろめたさが軽減できるフードを指す。現在の潮流はダイエット法としても流行した糖質オフや低GI、グルテンフリー、砂糖不使用などの他、スーパーフード人気や自然食材志向に代表される「口にするならば体に良いものを」「素材の味を生かしたものを」という志向を汲むものが多い。
代表的なギルトフリースイーツが2010年代前半にオーストラリアで生まれ、ヨガを行う人たちを中心に世界で広がった“ブリスボール”だ。ナッツやドライフルーツをメインにし、砂糖不使用、添加物不使用、グルテンフリーを基本としたボール状のスイーツで、日本では16年9月に誕生したブリスボール専門店、フードジュエリーが各地でポップアップストアを展開することで、ギルトフリーの言葉と共に認知度を上げていった。
ただ、ナッツやドライフルーツはブリスボールが日本に上陸する前から、インナービューティフードとして人気があった。例えば、以前はカロリーの高さから“ダイエットの敵”とみなされていたアーモンドは、2000年代後半にミス・ユニバース・ジャパン公式栄養コンサルタントを務めていたエリカ・アンギャル(Erica Angyal)が候補者たちに薦めていたことが知られると、不飽和脂肪酸やビタミンEをはじめとした豊富な栄養素が注目を集め、その後のスーパーフードブームもあってビューティフードとして定着した。ナチュラルローソンでは約10年前からナッツ類やドライフルーツの品ぞろえを強化しているが、年々売り上げが増加。特に17年は、前年比で約50%増の売れ行きだという。
ルミネは今夏、夏スイーツのプロモーションでギルトフリースイーツ企画を実施し、大丸梅田店は9月にロート製薬とコラボレーションした、“罪悪感軽減スイーツ”を企画した。ブリスボールを日本に広く紹介したフードジュエリーは8月から、砂糖と添加物を使わずグルテンフリーで仕上げたケーキ「オージーケーキ」をメニューに加えて、ギルトフリースイーツの選択肢を広げた。
ニールズヤード レメディーズ(NEAL'S YARD REMEDIES)が運営するブラウンライス(BROWN RICE)は、アンギャルとビューティスイーツを企画・開発しているが、10月17日からは新たにナッツやドライフルーツを使った「ビューティバイツ」を発売。9月に表参道にオープンした大阪うおまんグループの新業態店ヘブンズ レシピでは、管理栄養士が監修した“ギルトフリーなカレー”をランチタイムに提供する。ヒルトン東京お台場の2017年クリスマスケーキにも、ヘルシー食材を使用したケーキが登場するなど、シーズンごとに新しいギルトフリーフードが誕生している。
続々と発売される新商品には、「体に良い素材を使う」「栄養価が高い素材を使う、またはヘルシーに仕上げる」といった点以外に共通性はない。“ギルトフリー”は特定のフードや栄養素を指す言葉ではないため、昨今流行している、ゆるやかに糖質を取り入れる“ロカボ食”や、根強い人気のるマクロビオテック、オーガニック食材なども含まれるだろう。また、ギルトフリーという言葉は、美や健康、ダイエットの意識が高い人、サステイナブルな生活に関心がある人による、“食事や間食への向き合い方“とも理解できる。その汎用性の高さもまた、ギルトフリー人気を押し上げているのかもしれない。