ギンザ シックス(GINZA SIX)6階のギャラリー、ザ・クラブ(THE CLUB以下、クラブ)のグループ展「パターン―紋様 フォームズ オブ ビューティー(以下、パターン)」が10月28日~1月4日まで開催されます。クラブは東洋と西洋を代表するコンテンポラリー・アートを集めて展示販売するギャラリーです。イギリスおよび日本のサザビーズ(SOTHEBY’S)で経験を積んだ山下有佳子クラブ・マネジングディレクター(以下、MD)がテーマごとにキュレーションを行っています。
第3弾の「パターン」では、地域を問わず、アートの装飾性や、コミュニケーション・ツール、標識などの実用的な要素として存在してきた“紋様”にフォーカス。現在最も重要な抽象表現主義作家の一人といわれるクリストファー・ウール(Christopher Wool)の初期作品を筆頭に、草間彌生や猪熊弦一郎など10人のアーティストの作品を紹介しています。ギャラリーの中央には、デンマークやフィンランドなどから買い付けたチェアがオブジェのように展示されており、平面と立体の対比が興味深い空間が広がっています。
三越の包装紙「華ひらく」をモチーフにしたファンゴールデン
猪熊がデザインした三越の包装紙「華ひらく」は、世界中で最も知られている日本を代表する紋様の一つです。この包装紙は日本初の、百貨店のオリジナル包装紙だそうです。猪熊は1930年代後半、フランス遊学中にアンリ・マティス(Henri Matisse)の下で絵画を学び、50年代から約20年間ニューヨークで制作活動をしていました。当時はジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)などとも交流があったようです。同展では、ニューヨークの風景を描いた「ランドスケープ」など代表作を展示。また、オランダを代表するアーティストのダーン・ファンゴールデン(Daan van Golden)が「華ひらく」をモチーフに使用した作品を展示するなど、東洋と西洋のアーティストの視点が交差する展示になっています。今年頭に他界したファンゴールデンは60年代に日本に滞在した際に紋様に出合い、作品に取り入れるようになったそうです。
新進気鋭のリチャード・ライスの新作も
ロンドンを拠点に活躍する新進気鋭のリチャード・ライス(Richard Rhys)がこの展覧会のために制作した新作も展示されています。彼はセントマーチン美術大学の卒業で、パターンを用いて制作を行う注目のアーティスト。ギャラリーに所属せずセルフプロデュースでアート活動を行う新世代のアーティストの一人といえるでしょう。YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)として知られるデミアン・ハースト(Damien Hirst)やサラ・ルーカス(Sarah Lucas)などとも交流があり、サーペンタイン・ギャラリーなどでの展覧会が話題を呼びました。
日本のコレクターは楽しむためにアートを購入
最近では、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営する前澤友作スタートトゥデイ社長が123億円余でジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)の絵画を落札するなど、日本でもアートに対する関心が高まりつつあります。山下MDに日本におけるアート事情を聞くと、アートの購入を通して同好の人たちとの交流が生まれるなど、社交の一部になりつつあるそうです。海外の場合はアドバイザーが付くケースがほとんどのようですが、日本のコレクターは勤勉でよく勉強していると感心されていました。日本の場合、投資や資産目的というよりは、自分で楽しむコレクターが多いとのこと。事業者であれば、ビジネスのブランディングにもなるし、国や地域に貢献したいという思いが根底にあるようです。