オンワードグループ(以下、オンワード)がオーダーメードスーツに特化したブランド「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」を発表した。自宅での出張採寸を依頼し、採寸後は最短1週間で顧客へ商品が届く。オーダーメードスーツを専門にする直営店「セビロアンドコー(SEBIRO & CO.,)」も「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」として生まれ変わり、ECに加えてリアルでの訴求も行う。
テクノロジーを活用して短期間納期を実現するオーダーメードスーツ市場はここ最近大きな盛り上がりを見せている。紳士服を得意とするオンワードが新たなオーダーメードスーツ事業を始めた狙いとは。オンワード樫山のメンズビジネス事業本部長で、同事業を担当するオンワードパーソナルスタイルの関口猛・社長を取材した。
WWDジャパン(以下、WWD):なぜ、新たなオーダーメードスーツ事業を始めたのか?
関口猛オンワードパーソナルスタイル社長(以下、関口):オンワードではもともと、法人・個人向けにオーダーメードスーツの訪問販売をしてきた。その数は年間2万着にも及ぶ。加えて「セビロアンドコー」でも年間7000着を売っており、当社で扱う年間数十万着のスーツ販売の中でもオーダーメードスーツは成長事業だと感じていた。ただ、これまでブランドごとの縦割りでオーダーメードスーツを扱ってきたため、3月にオンワードパーソナルスタイルの社長に就任し、販路をまとめようと考えたのがきっかけだ。
WWD:ターゲットは?
関口:重点を置いているのは若年層。最初にスーツを買う20代や働き始めて5〜6年目くらいの顧客がメーンだろう。私自身もともとモードブランドを扱っていたが、スーツの担当になって、いかに日本人がスーツの着方を理解していないかということを痛感した。日本人がグローバルに活躍する上でも、良いクオリティーのスーツを正しいサイズで誰もが着られるような“スーツの民主化”をしたい。
WWD:新事業において、何がキーポイントになったのか。
関口:実はわれわれはメーカーでありながらオーダーメードスーツの自社工場を持っていなかった。そこで昨年から中国の先進工場を視察してきたが、そのシステム化の度合いに驚いた。工場がキーポイントになるはずだと感じ、中国の協力工場を子会社化して資本を投入し、新事業のための土台を作った。
WWD:資本を投入し、工場に何を求めるか。
関口:いかに短期間で出荷できるかということだ。通常の縫製工場の考え方のベースにあるのはスピードより効率。例えば、工場では効率的に生産をするためにある程度まとめた量のオーダーが入ってから動くことが多い。われわれの工場では注文後最短1週間納品を可能にすべく、採寸データを工場に直接送り、しかも自動でCADデータにできるような仕組みを開発した。これで本来数日かかる生産までの時間を大幅に圧縮できた。
WWD:納品まで最短1週間という納期はかなり画期的なスピードだと思うが?
関口:当社「セビロアンドコー」でも通常納期3週間ということを考えれば、かなり速いのではないだろうか。そもそも、最近はオーダーメードスーツ市場が活発なこともあり、生産工場が足りていないところも多く、納品は数カ月後になることも。われわれはさらなる短期間納品を実現するために、工場から直接顧客へ届ける物流にも力を入れている。