米老舗百貨店のロード&テイラー(LORD & TAYLOR)は、2018年春から大手スーパーマーケットチェーンのウォルマート(WALMART)のECサイト内に“旗艦店”を出店する。
6000万アイテムをECサイトで販売するウォルマートは、9月にデジタルに強いアパレル小売り出身のデニース・インカンデラ(Denise Icandela)をファッション部門のシニア・バイス・プレジデントに指名するなど、アパレル分野の強化を図っている。ウォルマートにとって老舗百貨店との提携は、ファッション事業の強化と高額なアパレルの導入という狙いがある他、オンラインモール化への第一歩にもなる。
一方で、ロード&テイラーは1826年にオープンしたアメリカで最も古い百貨店だが、“地方の百貨店”の域を出られないことが課題だった。また、10月にはニューヨーク五番街旗艦店の一部を売却したため、ホリデーシーズン以降は総店舗面積が約6万平方メートルから約1万4000平方メートルまで縮小する。ウォルマートと組むことで、一気にアメリカ国内での露出拡大を狙う。
ロード&テイラーを擁するハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY以下、HBC)のリチャード・ベーカー(Richard Baker)=エグゼクティブ・チェアマン兼暫定最高経営責任者は、「ロード&テイラーは地方の百貨店が直面する問題に苦しめられてきた。今回の提携は、リアル店舗にかかるコストを削減でき、アメリカ最古の老舗百貨店をウォルマートのインフラによって全国規模の小売り企業へと進化させられる」と話した。
また、ウォルマートへのロード&テイラーの出店に反対するブランドも出てくる可能性を認めつつも「各ブランドと交渉中だ。ウォルマートのECサイト内に出店しても、典型的なロード&テイラーの旗艦店と変わらないため、どの出展ブランドも販売チャネルと販促方法をコントロールする権利を変わらず持つことになる」と説明した。同百貨店のECサイトでは「アディダス(ADDIDAS)」「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」「ダナ キャラン ニューヨーク(DONNA KARAN NEW YORK)」「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「ナイキ(NIKE)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」などを取り扱う。
一方でインカンデラ=シニア・バイス・プレジデントは「われわれの最終目的は、日常的に着られるアイテムから高級品まで取りそろえることだ。そのためにウォルマートのECサイト内に高級ブランドが参入できるスペースを作り出す。当社の顧客は確実にハイエンドなアイテムに興味がある」と話す。ロード&テイラーがウォルマートのECサイト内でどのような扱いになるかはまだ検討中だというが、現在のロード&テイラーのECサイトに引けを取らない内容となる予定だ。
なお、HBCはサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)も傘下に収めている。また、インカンデラ=シニア・バイス・プレジデントはサックス・フィフス・アベニューでデジタル部門を一から築き上げ、副社長まで務めた人物だ。