ファッション

祐天寺のコーヒー店「アンビエントブリュー」 やってみたいことは全てやる店主の胸の内

 「アンビエントブリュー(Ambient Brew)」は、東急東横線祐天寺駅前の商店街を数分歩いたところにある。同店舗の向かいのビルには、昨年11月にオープンして注目を集めるヘアサロン「ダーリン.(darlin.)」や、メンズ・ウィメンズの古着やセレクトアイテムを取り扱うショップ「フィート / スティーフ(feets / steef)」が入っている。初めて訪れた際に感じたのは、クセのある店構えが醸し出す若干の入りづらさだったが、1度入ってしまえば落ち着きのある心地よい空間があった。その時に、店主は美容師免許を持っていると聞いたのだが、いったいどういう思いでコーヒーショップを出店したのだろうか。商店街の中でひときわ洗練された雰囲気を持つ一角にある同店の小原瑠偉・店主に、オープンから1周年を迎えようとしている今の心境を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD): 内定先のヘアサロンの入社を辞退したのはなぜ?

小原瑠偉・店主(以下、小原):入社しても続かないのではないかという先入観で辞退しました。その後、やってみたい仕事を全部やってみようと思い、好きな洋服の仕事や学生時代の延長で飲食業、クラブでも働きました。

WWD:どうしてコーヒーショップを出店することに?

小原:いろいろな環境で働いてみて、上下関係がある組織で働くことが自分に向いてないと感じました。自発的に何かできたらと考えていたところ、だんだんコーヒーに対する興味が強くなり、お店をやりたいと思ったのが始まりです。コーヒー店を巡ったり、本やウェブサイトを見たりしてほぼ独学で知識を身につけました。自分の中で、これだという味があります。それが基本かどうかは別として、自分がおいしいと思ってないと意味がないから。小さいコーヒー店でも2、3年働き、今に至ります。

WWD:店名の由来は?

小原:“アンビエント”は直訳すると“環境”とか“周囲の”という意味。音楽ジャンルにもありますが、主張や強制がなくて自然と耳に入ってくる感じが心地いいんです。ぼく自身は主張しないけれど、うまくここにある環境に溶け込めたらなという思いを込めています。“ブリュー”は“コーヒーや紅茶を淹れる”という意味ですが、コーヒー店を始めるに当たって“〇〇コーヒー”という名前にしたくなかったんです。“brew up”という言葉があって、“企む”といった少し生意気な意味もあり、それもいいなと思いました。逆にいうとコーヒー店のイメージが湧きづらいので苦労もしています(笑)。

WWD:なぜ出店先に祐天寺を選んだ?

小原:実はあまり祐天寺に馴染みはないのですが、もともとここで古着屋をやっていた人が空くことを教えてくれて、直感でアリだなと思いました。ラフにたまれる空間を作って、街を盛り上げられたらと思って始めました。深夜に飲めるコーヒー店があればという願望を形にしました。ただ長年住んでいる人からすると、“にぎやか”も“うるさい”と受け取られてしまうところに葛藤があります。お客さんはもちろん、近隣の人たちの気持ちも汲み取っていかないとなかなかやっていけないなと思います。初めは外にも席があったんですけど、そこにお客さんがたまって道をふさいでしまっていました。街の人たちに向けて、見てすぐわかるアクションが必要だと思い、思い切って外の席を取り払いました。

WWD:近所のお店との交流はある?

小原:毎日、向かいのヘアサロン「ダーリン.」のスタッフが仕事終わりに来てくれます。「ダーリン.」のお客さんが来てくれることや、その逆もあり、良い関係を作れていると思います。ここに出店してからできた縁なので、余計に感謝の気持ちが強いです。彼らは見てわかるアクションを起こしてくれるので、自分もやらなきゃという気持ちになります。職業は違うけれど、祐天寺には「ダーリン.」と「アンビエントブリュー」があるね、というくらい浸透すればいいですね。

WWD:他のコーヒーショップとのつながりはある?

小原:コーヒー業界とはつながらないようにしています。本当はもっと早く店を始めたかったのですが、ちょうど“サードウェーブ”が注目されている時期だったので、その流れに乗りたくなくて落ち着くまで待っていました。そんな経緯もあって、業界から認識はされているものの一線を引かれていますね。ぼくはそれをよしとしていて、業界で馴れ合うくらいだったら違う業界とコンタクトをとっている方が個性が生まれるし、新しいお客さんも来てくれると思う。祐天寺には、他に2、3軒コーヒー店がありますが、馴れ合わずそれぞれでやっている感じがあります。

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