日本の美容文化やプロダクトをテーマにしたプロジェクト、「ビジョ(Bijo;)」のポップアップストアが11月14〜25日、パリの日仏文化会館内にあるザ・ジャパン・ストア・イセタン・ミツコシ・パリ(The Japan Store ISETAN MITSUKOSHI Paris)で開催中だ。“Beaute Inovatrice Japonaise Originale(日本独特の革新的な美しさ)”の頭文字からなるビジョをプロデュースするのは、日本の美容ブランドのヨーロッパへの進出をサポートするコンサルティング会社、デニーシュ(Dessigns)代表の須山佳子。昨年11月と今年の4月に続き3回目の開催となる今回は“Les secrets de Beaute des Japonaises(日本人女性の美しさの秘密)”をテーマに掲げる。参加ブランドは、ホテル リッツ(Hotel Ritz)のシャネル(CHANEL)のスパでも採用されているネイルニッパーの「スワダ(SUWADA)」、すでにパリのコレット(Colette)で先行販売している新フレグランスブランド「トバリ(TOBALI)」、刷毛職人が作った洗顔ブラシ「アルティ(ALTY)」、1899年に金箔屋として創業した和コスメの「まかないこすめ」など計15ブランド。
過去2回のポップアップでは、職人が手がける日本の優れたビューティプロダクトやきめ細やかな手入れ方法を紹介し、フランス人女性は特別な体験となって、高い評判を得た。フランスの水は硬水のため洗顔や洗髪には向いていないといわれており、メイク落としは水を使わず拭き取り式、洗髪は週に2回程度というのが一般的。シャワー後には保湿クリームを1つ塗るだけの女性が大半で、化粧水と乳液、クリームをしっかり重ねづけする“レイヤリング”の方法さえも、フランス人女性にとっては全く新しい美容法として驚かれたという。日本をはじめアジアの美容法への関心は高く、今年に入りプランタン(PRINTEMPS)やボン・マルシェ(Le Bon Marche)でも「まかないこすめ」や「ウカ(UKA)」を常設コーナーで扱い始めた。フランス人女性の美容への意識が高まる背景について須山は「テロや経済不況など明るい時代ではないからこそ、手で肌に触れて感じて“自分をケアする”という考え方が求められているのかもしれない。美しくなることだけが目的ではなく、心を落ち着け、内側から浄化することを意識した日本の美容文化は、時代にマッチしていると思う」と語った。また、フランス人女性の美容への意識が高まる一方で、「日本・韓国・中国から輸入するスキンケアアイテムはアジアとひとくくりにされ、それぞれの国の美容文化の特徴が理解されていない現状を目の当たりにしてきた」という。そこで、世界でも優れた日本の美容ブランドを伝えるべく、同プロジェクトを起ち上げた。「手間をかける日本の美容法は、商品を置いておくだけでは顧客に伝わらない。対面での説明や実践を通して理解してもらえるし、過去2回のポップアップで『やっぱり面倒だから続けられない』という意見もあり、日本とフランスの接点を作って展開しなければならないことを学んだ。その経験を生かし、今後は“美”をテーマにしたライフスタイルストアの店舗を構える予定だ」と語り、“美”を通して日本の技術や伝統、メンタリティを新たな魅力として発信し続けている。
ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける