森美術館は11月18日から2018年4月1日まで、「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」を開催する。金沢21世紀美術館の「スイミング・プール」で有名なアルゼンチン出身の現代アーティスト、レアンドロ・エルリッヒ(Leandro Erlich)の、24年にわたる活動の全容を紹介する過去最大規模の個展だ。会場には、視覚・聴覚に訴えかける立体作品を得意とするエルリッヒを代表する約40点を展示。そのうち8割は日本初公開だ。
同展に合わせて来日したエルリッヒは、「(この規模の個展は)ずっとやりたいと思っていたプロジェクト。全ての作品をこうして一挙に見られるのは、僕にとっても初めて。この熱狂を日本の人とともに感じ、拡散できることを願う」と語った。南條史生・森美術館館長はエルリッヒについて、「アーティストには魔術的な要素を持った人がいるが、彼がまさにそう。平凡な日常に非日常的な体験をもたらしてくれるのが彼の作品の醍醐味だ」と称賛した。
内覧会には特別ゲストとして女優でフィギュアスケーターの本田望結と妹の紗来姉妹が来場。会場を観覧した2人は、「美術の授業でも見たことがあったので、興味があった。写真を撮るのがすごく好きなので、どこで撮ってもいいのがうれしい!」「見るだけじゃなくて、参加できたのが楽しかった!みんなでまた来たい!」と、体験した作品を写真で振り返りながら大興奮の様子だった。
エルリッヒの作品は、観客自らが体験することで初めて完成するといわれる。人が重力に逆らう様子を体験できる目玉作品の「建物」や、教室の鏡に映る自分の姿が亡霊のように見える「教室」はまさに、そこに立つことで作品が完成する作品だろう。実際に水がないにもかかわらず船着き場のようにゆらゆら揺れる船が印象的な「反射する港」や、迷路のような体験型のインスタレーション「試着室」なども、作品の中に立たなければその錯覚を味わうことはできない。これらの作品のモチーフは日常にありふれたものが多く、それがエルリッヒ作品の親しみやすさの所以となっている。
一方で、エルリッヒの作品には社会的なメッセージを含むものも数多くある。例えば、国を模った雲の作品「雲」では、雲のように流動的な国境を揶揄し、廃墟のような空間の「教室」には地域の過疎化が裏テーマにある。作品を体験することで、既成概念や現実に疑問を抱かせるなど、社会的背景を考えるきっかけを作ることも、彼の作品の特徴といえるはずだ。
■レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル
日程:11月18日〜2018年4月1日
時間:10:00~22:00(※最終入館は21:30)
場所:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
入場料:一般 1800円 / 学生(高校・大学生)1200円 / 子供(4歳~中学生)600円 / シニア(65歳以上)1500円