ファッション

「リトゥンアフターワーズ」10周年のショー ”戦後”をテーマに未来の平和のあり方へ問題提起

 山縣良和の「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」は11月17日、ブランド設立10周年を記念したファッションショーを東京都庭園美術館で開催した。“After Wars(戦後)”をテーマに、2017年春夏から3シーズン続く、“フラワーズ”と題した3部作の締めくくりとして、日本の戦後の装いに山縣らしいユーモアを加えた。

 ショーには“集団性”“戦争”“装飾性”“自然”の4つのキーワードが隠れていた。ファーストルックはピンク色のオーガンジーのセットアップを着用したモデルと、スーツを着たマスコミ集団。後には、赤ずきんのような子供たち、制服を着た男子学生たちが登場。これは集団で同じ服装、オシャレをする、という日本特有の“集団性”の装いを表現したもので、「渋谷のハロウィンもそうだが、1人ではなく、集団仮装して目立とうとする文化も日本らしいこと」と山縣。

 “戦争”をダイレクトに想起させるショーピースも多かった。燃やした着物を貼り付けたドーム状のルック、着物をまとった少女が乗った荷台をひく兵士、千羽鶴でできた服、棺をロープで引きずるモデルなどが登場。服を通して“忘れてはいけない過去”に焦点を当て、現在と未来の”平和”のあり方に問題を提起する。

 “装飾性”では、装うことを山縣なりに解釈。ヘッドピースには、花や紙くず、ガムテープ、果物の梱包資材など巻き付けて、身近なものをファッションとして変換した。重ね着をしたウエアは、ギンガムチェックをキーモチーフに制作。縦と横から立体的なプリーツ加工をしたピンクやブルーのオーガンジーは、透け感の濃淡でギンガムチェックを現したオリジナルテキスタイルで、ブラウスやスカートなどを仕立てている。ラストには葉っぱや枝の“自然”をスタイルと表現した。山や森に囲まれて培われた日本の文化として、過去から現在までの時代のつながりの象徴として見せた。

 ショー終了後、山縣デザイナーは「この10年間、『ファッションは何か?』と考えてきた。『あれもファッションなんじゃないか、これもファッションなんじゃないか』と、神様もゴミも、世の中のいろんなものをファッションとして描いてきた(笑)。まだ答えは見つかっていないが、もっと広い概念なんじゃないか思っている。次の10年には、『これがファッション』と言えるものを見つけたい」と語った。

 また、「リトゥンアフターワーズ」はショー翌日の18 日から、同美術館で開催される展覧会「装飾は流転する」に作品を出展している。07年春夏のインスタレーションから、12年春夏に発表した「神々のファッションショー」などのショーピースが並ぶ。さらに、詩人の谷川俊太郎が山縣デザイナーの気持ちを代弁して書いたという詩「十二の問いかけ」も披露される。同展には山縣の他、山本麻紀子、ベルギーのヴィム・デルヴォワ(Wim Delvoye)、オランダのニンケ・コスター(Nynke Koster)、タイのアラヤー・ラートチャムルーンスック(Araya Rasdjarmrearnsook)らジャンルや国籍が異なる7組のアーティストが参加し、それぞれが日常生活の中の装飾をテーマにした作品を出展する。会期は18年2月25日まで。

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